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イベリス
第百十話 咲が気に入った服装その五

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「最もです」
「やっぱりそうですね、そういえば」
「そういえばとは」
「店長さんもですね」
 今もスーツ姿の速水を見て話した。
「そうですね」
「私もですか」
「だって真面目にこのお店されていますね」
「まあ犯罪はしていませんね」
 速水は笑って応えた。
「私も」
「そうですよね、ならです」
「私も真面目ですか」
「そうですよね」
「さて、それはどうか」
 どうにもという目でだ、速水は答えた。
「私の場合は」
「違いますか」
「このタロットは特殊でして」
 タロットカードの一つ、恋人の逆を出して話した。
「私は少しです」
「違いますか」
「ブラックではありませんがホワイトかというと」
 それはというのだ。
「幾分です」
「違いますか」
「私は」
「そうなんですか」
「私は自分のファッションには気を使っていますが」
 それでもというのだ。
「真面目とはです」
「思われていないですか」
「はい」
 そうだというのだ。
「私自身は」
「そうですか」
「犯罪は犯していなくても潔白か」
「そうでもないですか」
「まことにこのタロットは何かとありまして」
 恋人の逆を持ったまま言うのだった。
「そのお陰で暮らせていますが」
「それでもですか」
「私はホワイトではありません」
「真面目かというと」
「人の道は踏み外しているつもりはないですが」
「それが真面目じゃないんですか?」
 咲は速水の今の言葉に自分と同じテーブル休憩室の何人かが座れるそこに自分と向かい合って座っている彼に話した。
「人の道を踏み外していないなら」
「それか犯罪を犯していないなら」
「そうじゃないですか?」
「そう言えるかも知れないですが」
 速水は咲の今の話にこう前置きして話した。
「完全に表の世界にいて真面目にです」
「暮らしていてですか」
「そうしていまして」
 そのうえでというのだ。
「私は真面目とです」
「思われますか」
「はい」 
 そうだというのだ。
「そうです」
「だからですか」
「私は自分はです」
「真面目とはですか」
「思わないです、出来れば完全に表の世界にいて」
「そこで真面目にですか」
「人は生きることが一番いいかも知れません」
「サラリーマンの人達みたいにですか」
「そう思います」
「店長さんはそうじゃないんですね」
「サラリーマンやお百姓さん、工場員といった表のお仕事はです」
 それはというのだ。
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