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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十三話 寸を進めずして尺を退く
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そういって再び緊張が高まったその時、
「―――なッ!?」「ツッ!?」
町全体に広がる重圧。それはあたかも天が降り立ったかのようで誰もが瞬時に理解した。ラインハルト・ハイドリヒがこの町に顕現した、ということに。そして当然、彼の爪牙であり一番槍を自負しているヴィルヘルムのとる行動は決まっている。
「ク、ククク、ハハハハハハハハハ―――――――ああ、テメエ等何ぞに構うどころじゃねえなコリャァ。まあ
精々足掻けや。次会う時にも俺を失望させんじゃねえぞ」
目の前にいる気に入った獲物であろうともそれを無視してハイドリヒ卿の下に集う。どんなことであろうとも優先する絶対的な第一条件なのだ。
結果的にみれば司狼とティトゥスは助かった。だが、結果は敗北に等しい。ティトゥスの左腕を失い全力の一撃、それこそ乾坤一擲と言っても良い一撃を与えて受けた傷は致命傷というにもおこがましい掠り傷程度のものだった。
「あークソ!」
それを理解している司狼は道端に転がっていた石ころを蹴って苛立ちを抑える。ティトゥスの方は失った左腕を作った包帯できつく縛り付けながら司狼に話しかける。
「なあ……」
「……何だよ?」
「さっきの戦いの時にさ出たあの気配、確実に敵さんの大将、つまりラインハルトだよ」
「…ああ、分かってるよ」
「こういっちゃ何だけどさ。別にあの吸血鬼に対してはこんだけ苦戦したけどそれでも余裕保ててたんだよね」
「ハッ、腕千切られといて余裕とか言う様かよ?」
「茶化さなくても良いだろ、精神的なものだよ。君の方こそチビって俺の脇から隠れて撃つ以外何もできてなかったじゃないか」
「ああ、そうかもな……」
皮肉を言われたにも関わらず司狼はそれを認めていた。実際、司狼自身は今回の戦いで直接的に何か出来たわけでもなく、そういう意味では自分は何も出来なかったと思っているのだ。
「何だ、落ち込んでるわけかい?それで如何するのさ、僕は弱いから戦えませんとでも言って逃げるのかい?」
「誰がするかよ、んなみっともねえ事、テメエの方こそ腕無くなったからって戦線離脱するわけねえだろ?」
「当然さ、って言いたいところなんだけどね。大分無理ゲーだよね、アレ」
そういって目で指し示すのは学校の方角。圧倒的なまでの存在感。自分達がまるで地面を這っていく虫の気分にでもさせられるほどの差。
「ま、如何にかなるかな、多分?」
「疑問系な上に多分かよ。一々信用ならねえな。どっちにしろ何とかなら無くても何とかすべきだろ」
「まあ、負けたら世界が滅ぶだけだし、もっと楽しんで逝こうよ」
軽いノリで言い合いながら決着をつけるために学校で蓮と合流しに行こうと決断した。
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