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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十三話 寸を進めずして尺を退く
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えにもっと俺を絶頂させるほど楽しませろよ、でねえとなァ死ぬしかねえんだぞ。なあ、見せてみろよ。まさかこれが本気じゃねえだろ。秘策の一つや二つ考えてきてんだろ?俺を興じさせろよなァ!!」
杭と共に左手を突き出すヴィルヘルム。司狼は鎖を出してその場から上に回避を、ティトゥスは寧ろ来いと言わんばかりに両手に銃を構えて杭を撃ち落していく。
「いい加減、馬鹿の一つ覚えみたいな突進をしてくるんじゃないよ!」
ヴィルヘルムに向かって放たれた銃弾はこれまでとは違っていた。それはこれまでのような鉛の銅色ではなく鈍く輝く銀。言うまでも無く化け物退治に定番の銀の銃弾であった。流石のティトゥスも見た事の無い弾丸を精製するのには時間が掛かり作り上げるまでにかなりの消費を強いられた。
そうして放たれた銀の弾丸は全部で八発。杭は既に全て撃ち落しており後はヴィルヘルムに命中すればいい状況だ。もし避ければ上から司狼に狙い撃ちできる。一瞬のタイミングを成功させ絶好の機会に持ち込む。これが通れば或いは、と。だがあろうことかヴィルヘルムは真っ向から突撃を逸らすことなく突っ込んできた。
「ツがアァッ……ッ!!??」
結果、八発全て命中した。にも拘らず勢いは衰えることなく左手ではなく、溜めて突き出された右腕に貫かれる。必死に体を反らしたおかげか心臓には当たらなかったものの左腕の上腕が引き千切られる。それでも尚、反撃したのは彼の意地か戦いのために組み込まれた反射か。ともかく残った右腕の銃で外さないようにするために腹を狙う。同時に司狼も攻撃を仕掛ける。流石に距離を詰めたままは不味いと思ったのかヴィルヘルムは離れる。
「オイ、勝手に死ぬんじゃねえぞ。テメエにはまだまだ働いてもらうんだからよ」
「ハハ、腕がちぎれてまだ働かせるとか、とんだブラック企業に勤めさせられたかな?」
互いに冗談を言い合いながら司狼が庇うような立ち位置に動く。一方ヴィルヘルムのほうは八発の銀の銃弾を受けているにも関わらず殆ど意味を成していなかった。
「確かに俺が吸血鬼である以上銀に弱えってのは事実だ。だがよォ、それでも俺には届いてねえよ。地力の差がはっきりと出ちまったみてえだな」
そう、弱点となりうる物であっても限度というものがあるのだ。ヴィルヘルムと螢では相性の差で螢が勝っても実際に戦えばヴィルヘルムが勝つだろうと予測されるように、シュライバーが仮に真の創造に至ればザミエルでも勝てないように相性だけでは敵に勝つことは出来ない。
「無傷って訳には以下ねぇがよ。如何考えてもテメエ等の方が不利みてえだな?」
「そうでも無いさ。ようやく有効打にはなったんだ。このまま流れを変えて見せるよ」
「ああ、オレようやくの出番だし、いっちょ派手にやらしてもらうだけさ」
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