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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十三話 寸を進めずして尺を退く
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―――同時刻・教会―――

「なッ!?」

聖遺物を持つもの、いや魔道に身を染めたものや多少感覚が聡い人間ならば誰でも分かるであろう。今ここに第七が開いたことを。そしてラインハルトがこの町に降り立ったことを。

「残念〜、時間切れね。あなたの同盟相手二人とも死んじゃったみたいよ」

蓮自身、ヴァレリアとはあくまで同盟相手という関係でしかないと思っていた。しかし、それでも僅かな間とはいえ味方であった二人が共に斃され贄となってしまったのだ。結果としては敗北の連続、第五での戦いの時も、ヴァレリアの学校での戦いもそして蓮自身、テレジアを救えなかった時点で敗北としか言いようが無い。

「凡そ二十分―――貴方がアウグストゥスと私を相手に(かま)けていた時間よ」

突然、語りだすパシアス。蓮自身時間を掛けすぎていることには気づいていた。しかし、時間を引き延ばしても時計の針が進むことを停めるまでには至らない。たとえ千分の一秒に時間を引き延ばしても蓮の感覚で千秒たてばそれは一秒だ。結果、創造を発動する前や精神的な振れ幅も含め蓮自身の感覚で経過した時間は凡そ十万秒、或いは二十七時間と言い直してもいい。それほどの長期戦(むろん蓮にとってだが)を続けながらも斃しきることができなかった。

「何なんだ……お前は?」

不気味、不思議、不可解、そう言い連ねるしかない。目の前に立つパシアスという女性はアウグストゥスと同じ分体なのだ。にもかかわらず蓋を開けてみればアウグストゥス以上の実力で藤井蓮と拮抗する。信じられないとしか言いようがない。事実、クラウディウスもアウグストゥスも平団員のそれ以下としか言いようがなかったはずだった。

「パシアス、正式名称はウェスパシアヌスだけどそれは男性名だから貴方もパシアス、或いはウェスパシアとでも呼んで頂戴。
貴方と戦えてた理由は簡単よ。記憶による経験は大切でしょう。知っていてそれが自分の身の丈にあっていれば対応できる。私の能力は人喰い(カニバリズム)による総ての吸収。ああ、ただ単に食べた相手の経験を持つわけではないのよ。生前に限りなく同じ嗜好、感情を持つようにすることも出来る。経験値のもらえる量が最大値になるといえば分かるかしら?」

「それでなんで俺に対抗できるようになる理由になる。お前のその見た目からしてルサルカの奴を喰ったんだろうが俺はアイツと戦った記憶なんて無い」

確かにパシアスもルサルカも共に聖遺物を使う藤井蓮と戦った記憶は無い。だが、彼女は彼との戦いの記憶を、それも最も近いであろう者を持っている。

「忘れてた?さっきまで貴方と戦ってた相手がいるでしょう?」

アウグストゥス―――パシアスと蓮が戦いを始める直前まで教会内にあったであろう彼の死体は既に血の一滴も残さず無くなって
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