九話 林檎の欠片達
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んがいいって言ってくれてんだからもらっとけばいいじゃん」
「いいや、好意でこんな面倒なものを作ってくれて、そんなものを受け取っておきながら何も返さないなんて不誠実だ。せめてリコに対する俺の感謝の気持ちぐらい表したい――だから、受け取ってくれないか」
リコを真っ直ぐに見据えてそうシュウが言い切ると、リコはしばしぼうっとした後、見つめてくるシュウの視線に慌てたように顔を伏せてしまった。その行動が不可解そうにシュウが首を傾げるとリコはどこか震えたような落ち着かない声を絞り出した。
「う、うん……それじゃあ受け取っておくね」
その返事に薄く安堵の笑みを浮かべたシュウはトレードウィンドウを開き受け渡すコルの額を入力していく。トレード相手として目の前に同様のウィンドウが開かれたリコが表示された金額に一瞬シュウを見るが、有無を言わせない笑みを目の当たりにすると再び赤みが差した顔を伏せてしまい、そのままOKのアイコンを押しこんだ。
トレードが成立したことに頷いたシュウが周囲を見ると、生暖かい視線を送ってきているアルバにトール、複雑そうな表情でシュウとリコを見ているマリに気づき、半目で少年達を見返す。
「何だその妙な顔は、マリまで」
「別にー?ただ見てるだけだよ」
「……あんたの自覚のなさに呆れてるのよ」
向けられた苦言の意味が分からないというように考え込むシュウと未だ顔を赤くしたまま上げられていない親友の姿にマリが大きな溜め息を吐く。
「まあいい、マリに頼みたいことが出来た」
「あたしに?」
「ああそうだ、一番の問題だったラシャが解決できたからな、ビリヤードテーブルの製作を依頼したい」
さらりとシュウが言ってのけた言葉にマリが一瞬固まる。
「――っ、何よそれ!?あたしそんなの見たことも無いのに無理に決まってるわよ!」
「図面なら俺が起こせる、製図の資格は持ってるし、何度かテーブルを分解したこともある」
「だからってそんな……」
「おやおや」
抵抗を見せるマリに、横から口を挟むアルバ。その表情にはにやにやとした含み笑いが浮かんでいた。
「木工スキルマスターっていってもたいした事無いんだな」
「……今、なんて」
「んー?職人としちゃあマリもまだまだだなってことさ、ミドウのおっちゃんならちょっと難題ふっかけられても朝飯前で仕上げちまいそうだけどな」
あまりにも分かりやすい煽り方だったが知り合いの職人プレイヤーの名まで引き合いに出されマリはわなわなと身を震わせると、唐突にびしりとシュウへ指を突きつけ高らかに宣言する。
「いいわよ、作ってあげる!ウッドクラフトマスターとして文句のつけようのないぐらい完璧に仕上げてみせるわ。ただしシュウ――
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