九話 林檎の欠片達
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子から立ち上がり、ヨルコらと視線を交し合うとしばしの間を置く。その強い眼差しは一月ほど前見えない復讐者の影に脅えていた彼とは別人のようだった。
「最前線は危険だぞ」
「理解してるわ、それでも行くと決めたの」
「ならこれ以上俺から言うことは何も無いな。カインズ、ヨルコ……前線は俺達が支えてみせる、お前達が来るのを待ってるぜ」
「うん、アスナさんやキリトさんにもよろしくね」
最後にヨルコが伝えた言葉に苦笑いを返しながら、シュミットはプレートメイルの重厚な足音を鳴らして店から力強い足取りで出て行った。
* * *
去っていくシュミットの横顔は来たときとは別人のようだった。ヨルコらとの会話を終えエルキンの店から出て行く彼を見送るとそれまで黙っていた少年達が口を開き始める。
「知り合い……だったみたいよね、あの人前線の人なんでしょ?どういう関係だったんだろ」
「さーてな、険悪な仲じゃないみたいだし、気にすることもないんじゃね?」
マリの疑問にアルバが投げやりな返答を返すが実際ヨルコらとシュミットの関係は傍目にはむしろ良好そうに見えた。心配することは無いだろうと結論付けた彼らの話題はやがて日常的な会話に戻っていく。
「そうだ、シュウ君」
「ん?」
「ちょっと作ってみたんだけど、これ見てもらえるかな」
そう言ってリコがメニューを開き、ストレージからアイテムオブジェクト化の操作を実行すると、彼女の手元にロール状にまとめられた薄い布地が出現した。深い緑色のそれを手渡されたシュウは布地の表面に手を滑らせると目を軽く見開き感嘆の息を漏らす。
「これは……ラシャなのか?」
「うん、シュウ君達と前ビリヤードできたらって話してたから、作ってみたの。手触りなんかはほとんどイメージで編んでみたんだけどどうかな、それらしく出来てる?」
「――ああ、この硬さに弾力、十分だよ。どのみち正規品でも多少のクセは出るんだ、まさかSAOで本当にこれが作れるとは思わなかった」
ビリヤードテーブルに用いられるマット材であるラシャ、リコが裁縫スキルによる布加工で作り上げたらしいそれに皆が興味深そうに注目しだす。武器という分野以外の製作スキルは意外に遊びのあるSAOでもこういった娯楽品の製作物は物珍しかった。
「リコ、これ買い取らせてもらえるのかな」
「そんな……お金はいいよ、私が勝手に作ったようなものなんだから」
「いいや、駄目だ」
遠慮をはっきりと拒むシュウにそこまで強く断られると思っていなかったのかリコが軽く驚きを見せる。そんなシュウを見てアルバは呆れたようにして口を挟む。
「お堅すぎんじゃねえのシュウ?リコちゃ
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