九話 林檎の欠片達
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
う、このSAOをクリアしてデスゲームから皆を、夫だったグリムロックさんを解放することがあの人の望みだったんじゃないかって、私達は思うの」
「なっ!いや、あの時グリムロックの話はお前らだって聞いただろう!?グリセルダはこの世界で人が変わったみたいに生き生きとしていたって――」
声を上ずらせながら否定しようとしたシュミットの言葉にヨルコは黙って首を振ると、彼と対照的な落ち着いた所作で語り始める。
「ねえシュミット、変わったのはグリセルダさんだけだったのかしら」
「……どういうことだ?」
「グリムロックは言っていたわよね自分はデスゲームに脅えて、竦んでしまったって。その姿を見て、グリムロックの言葉通りならそれまで従順に彼に付き添っていたグリセルダさんはどう思ったかしら」
ヨルコが言わんとしているところを薄々理解し始めたのか、シュミットは彼女の真摯な雰囲気にのまれたようにその真っ直ぐな瞳から目を逸らせなくなっていた。
「助けたい、愛しい人が相手ならなおさらそう考えたんじゃないかって思うの。そのためにグリセルダさんは強く変わらざるを得なかったんじゃないかしら」
「だが……それが正しいとしてもグリムロックのやったことはもう取り返しがつかない……」
シュミットが言いづらそうに口ごもる。《指輪事件》の真相、自分の意思ではないとはいえそれに加担してしまった身の彼にとっては口にするのも躊躇われる事柄だったそれを考えると、ヨルコが言うグリセルダの意思は無意味なものに感じられてしまったからだ。
「それでも、よ」
しかしヨルコは考えを曲げない、どころかその面持ちには強い決意が満ち溢れている。シュミットは彼の記憶にある彼女とは似ても似つかないその姿に呆然としていた。
「私はグリセルダさんのやろうとしたことを無駄にしたくない。それにグリムロックに分からせたいの。自分がやったこと、何を失くしてしまったのかを……この世界で死ねば私達の体は消滅するだけ、何も残らないからきっとPK、人殺しをするプレイヤー達も自分の手が何を奪っているのか実感しづらいのよ。だから現実に、グリセルダさんのいなくなった家にあの人を帰す。それが今の私達の目標よ」
「……そうか」
ヨルコの言葉からそれが生半可な決意ではないことを理解したシュミットは深く溜め息を吐くと、自嘲するような薄笑みを浮かべる。
「まったく、攻略組なんて呼ばれているのに見せ掛けだけだったみたいだな俺は、お前達がこんなになっているのに……誰かに頼ろうとしてばかりだった――何か、手伝えることはないか?」
「大丈夫だよ、皆よくしてくれるし、この集まりは職人プレイヤーのスポンサーも多いみたいで色々と支援してもらえてるんだ」
カインズの答えにシュミットは頷くと椅
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ