七十四 別れと出会い
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所が身の内に潜む存在の力を強めているのが原因だと、すぐに思い当った。
園林に囲まれた池の畔。ひそやかに隠れ家のような佇まいを見せる、水上の四阿。
美しい朱色の橋が架かる路亭は同じく朱色の柱に四方を取り囲まれている。
綺麗に整えられた美しい庭園に相応しいあずまや。
眼に痛いくらい真っ青な空の下に映える朱色の路亭に腰掛けていた綱手と接触したものの、あの場所に近いと察したナルトはすぐに離れようと試みた。
だが、既に遅かった。
五代目火影の視界からは逃れた一方で、すぐに意識が混濁する。
とても立っていられなくなって、現実でもそして内面でも、汚泥塗れる闇に塗り潰されてしまった。
なんとか己を取り戻したが、今も猶、気道には冷たく硬い塊が凝っているような感覚がして、息が詰まる。
身の内で長い間、蓋をし、鍵を掛け、閉ざしてきたソレが一気に解き放たれようとしている寸前、なんとか押しとどめようと、全力で足掻く。
故に、普段努めている余裕ある物言いがかつての口調へ戻ってしまった。
余裕をかなぐり捨てて全力で抑え込む。それほど切羽詰まった状況だった。
そうして息を吹き返したナルトは、忙しない息遣いで喘いだ。
なんとか陸へ這い上がる。
近場の大木に背中を預け、ナルトは呼吸を整えようとみっともなく息を繰り返した。
ガンガンと響く頭痛と耳鳴りに雑じって、不意に、チリン、と美妙な音色が耳朶を打つ。
思い出した。
鬼の国の巫女である紫苑から預かっているモノ。
懐から手繰り寄せた鈴を、縋るようにして握りしめる。
硝子で出来た鈴は滑らかな円を描き、美しい光沢を放っている。
その光にようやっと呼吸と、心が静まった。
「…助かった…紫苑…」
遠くにいる彼女に感謝の言葉を告げる。
かつて大陸の制覇を企んだ忍び達の一団にて、異界より呼び出された、想像を絶する強大な魔物。
その妖魔である【魍魎】を封じてきた巫女の守りは、想像以上に高度な封印術が施されている。
完全に封じることは叶わずとも、浸食を遅くすることは可能だろう。
鈴の力で身の内にいる存在の封印を改めて掛け直したことで、ナルトはようやく安堵の息を吐いた。
「そうか…此処は、」
今では禁じられた土地となっている閉鎖された、うちは一族の集落。
南賀ノ川の下流に建っている、あの神社に近づきすぎてしまったのだ。
木ノ葉の里を訪れる際はずっと気を付けていたのに、ヘマをしていまった。
あの場所に近づいてはいけない。
あそこから這い上がってきたヤツの残穢が、身の内に封じた存在と共鳴し、ナルトの身体を更に蝕むことになるなど理解していたのに。
五代目火影が座っていたあの朱色の路亭は、うち
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