暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第163話:虎穴に入らずんば虎子を得ず
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「アルドさんがキャロルの治療の為に行っている、想い出の共有……それをボクなりに参考にして、対象の脳内に電気信号化した他者の意識を割り込ませる事で観測を行う機械として作ってみました」

 因みにこれにはウェル博士が用いたダイレクトフィードバックシステムの技術も参考に取り入れられている。他者の脳に、科学的にアクセスできるあのシステムは道徳的に問題はあるかもしれないが見るべき部分は確かにある。

「つまりそいつで先輩達の頭ん中を覗けるって事か?」
「理論上は。ですが、人の脳内は、意識が複雑に入り組んだ迷宮……。最悪の場合、観測者ごと被験者の意識は溶け合い、廃人となる恐れも――」

 まだエルフナインが説明をしている途中だと言うのに、奏はコードに繋がったそれを掴んで自分の頭に被せた。

「え、ちょっ!? 奏さんッ!?」
「何?」
「何じゃなくて、エルフナインちゃんが言ってたじゃないですかッ! 最悪廃人になるかもってッ!」
「その程度の脅しにビビるアタシじゃないよ。何より、新しいLiNKERが出来ればマリア達だけじゃなくアタシも助かるんだ。それはそのまま颯人の手助けに繋がる。ならアタシはやるよ。マリアは?」
「……そうね。ようやく改良型LiNKER完成への目処が立ちそうなのに、見逃す理由はないわね」

 マリアの答えに奏は良い返事だと言わんばかりにもう一つのヘッドギアを放り投げた。彼女はそれを危なげなくキャッチすると、躊躇なく自分の頭に被せた。

 そんな彼女に調達は不安そうな顔を向けている。

「でも……危険すぎる」
「やけっぱちデスッ!」
「「2人に言われたくない」」

 止めようとする調と切歌に対し、2人が無茶をした事を咎めていた奏とマリアが反論する。流石にそう言われると2人もぐうの音が出ないのか、不満そうにしながらも押し黙るしか出来ない。

 それよか、問題なのはリスクを背負う側にあった。現在あるヘッドギアは脳領域を観測すべきマリアと奏の他、観測する側であるもう1人の分存在する。その残る一つが誰のものかと言えば……答えは1つしかない。

「観測者……つまりあなたにもその危険は及ぶのね?」
「それがボクにできる戦いです……、ボクと一緒に戦ってくださいッ! マリアさんッ! 奏さんッ!」

 覚悟を決めたエルフナインの言葉に対し、マリアと奏の2人が出した答えは1つだった。2人は顔を見合わせて頷き合うと、エルフナインの左右の肩を同時に叩いた。
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