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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第163話:虎穴に入らずんば虎子を得ず
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彼がこれまでにしてきた事を考えれば、頭など下げずとも協力を要請する事は可能だろう。だが敢えて了子はそうせず、自分が頭を下げると言う方法で彼に協力を要請した。
彼女が頭を下げた瞬間、エルフナインはハッと息を呑みアルドはフードの下から覗く口元に力が籠る。そしてガラス越しに了子が頭を下げる姿を目の当たりにしたウェル博士は、暫しその様子を眺めた後メガネを指で押し上げて位置を直すと思いの外あっさりと頷いた。
『いいでしょう、協力しますよ』
「え、本当?」
意外とあっさり彼が首を縦に振った事に、了子だけでなくアルドも驚きを隠せない様子だった。無理もない。彼の行動は正に傍若無人、唯我独尊。英雄願望を持ちながら思考と行動はまるで子供の様であり、それでいて頭脳は優れているのだから質が悪い。今回も何かしら要求が出されたり、嫌味をネチネチ言われるのではないかと正直覚悟していた。
それが思いの外簡単に物事が進みそうなので、了子は思わず拍子抜けしてしまったのだ。
『あのフィーネが僕に対して頭を下げていると思えば、そう悪い気もしません。勿論あなたとフィーネが別人だと言う事は理解していますがね?』
「そう……そうね。ありがとう。それで? あなたのLiNKERのレシピは……?」
了子がそう訊ねると、彼は懐から1枚のマイクロチップを取り出し独房と荷物の出し入れができる場所から差し出した。
「これに……?」
『えぇ。ですが言っておきますがこれだけで作れるほど僕のLiNKERのレシピは簡単ではありませんよ』
「えっ!?」
それでは話が違う。了子は今すぐ作れるLiNKERのレシピが知りたかったのだ。折角のレシピが渡されても、それが直ぐに再現できないようでは意味がない。
そう了子が抗議しようとした矢先、それを察したウェル博士は手を上げて彼女を制し言葉を続けた。
『言いたい事は分かりますが落ち着いてください。これだけでは、再現は難しいと言う話です。ですがあなた達は既にこのレシピを元に僕のLiNKERを再現できるだけの材料を持っていると僕は思っています』
「どういう事?」
『そうですねぇ……強いて言うなら、愛……でしょうか?』
「愛……?」
ウェル博士のヒントと思しき単語の意味が分からず了子が首を傾げるが、彼はそれ以上答える気は無いのかガラスに背を向けて簡易ベッドの上で横になってしまった。これ以上は何を聞いても答えてはくれないだろう。了子は取り合えず、レシピと言う成果を得られた事で満足する事にしてその場を後にした。
その道中、了子はアルドにウェル博士の言葉の意味について相談した。
「あれ、どう言う意味だか分かる?」
「愛……ふむ…………! そう言えば……」
歩きながら思案したアルドはある事に気付いた
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