蛇足三部作
『彼らの道は再び交差する』
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んだのはただ一人だけ。
こんな真似を出来る者がこの世に二人といる訳が無い。
その存在を探し出すべく、今は紫の波紋を描く瞳を戦場へと巡らせて――そして、見つけ出した。
誰もが警戒し殺気を向けて来る中、ただ一人だけ泰然とした態度で視線を寄越す、目深に外套を被った細い人影。
怪我を負った若い忍びの傍で片膝をついて治癒行為を行っている、強烈な既視感を与えてくるその身形。
――己が、見間違える筈が無かった。
焦がれ、追い求め続けて、憎み厭いながらも――ずっと、ずっと憧れていたのだ。
己が見守る中、人影は怪我をしていた忍への治癒を終えると、ゆっくりとした動きで立ち上がる。
――目深に被った外套の隙間より僅かに覗く口元が、緩やかな弧の形を描いた。
「随分と会っていなかった気がするが、こうして顔を合わせるのは何時以来だろうな?」
「……いずれにせよ、戦場で見えるのはこれで最後になる事だけは確かだな」
「――確かに、違いない」
交わした言葉の内容に互いに互いの喉を鳴らして、低い笑声を上げる。
旅先で旧友に出くわした時の様に悠然と、それでいてある種の親しみを込めて会話を交わす自分達へ、周囲の忍び達が訝しそうな視線を向けてくる。
隣で旧知の皮を被った術者の男が眉を顰めているが、そんな些事などどうでもいい。
己の必殺の技を止められたと言うのに、怒りは無い。
寧ろ相手の腕が衰えてなどいなかった事実に――心底安堵していた。
「……にしてもなんだよ、その目は」
呆れた様に片手を腰に当て、奴は半ばふんぞり返る様にしている奴のフード越しの視線がこちらへと向けられる。
「万華鏡どころか、あの六道仙人の目まで開眼していたなんて聞いていないぞ」
「うちはの写輪眼が行き着く先は輪廻眼だ。流石の貴様もその事実には思い当たらなかったらしいな」
「全くだ。今のお前に勝つのは非常に骨が折れそうだな」
「……よく言う。寧ろ首を刈られるのは貴様の方かもしれんぞ」
己の挑発を含んだ軽口に琴線を刺激された様に、人影が小さく笑う。
――皆が見守る中、被っていたフードが外され、解放された長い黒髪が空に舞う。
男とも女とも取れる中性的で涼やかな面差しに、神秘的な緑色の輝きを帯びた黒い瞳。
見慣れた不敵な微笑みは、嘗て幾度も戦場で相見えたあの時と全く変わっていなかった。
「――……穢土転生で甦ったのか?」
「最初は、な。けど、元々あれはオレと弟が考え出した禁術――その反忍術の一つや二つ、オレが持っていたとしても可笑しくはないだろう?」
「……術者との契約を解除したのではなく……術の上書きを行い、穢土転生の支配下から逃れたとでもいうのか?」
「まあな。万が一に備えて、生前から穢土転
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