蛇足三部作
『彼らの道は再び交差する』
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――――その時己の心の内に奔った感情へと名を与えるとすれば、それは紛れも無く“歓喜”であった。
空の一角が、己が呼び寄せた二つの巨大な隕石によって黒く塗り潰されている。
初撃は空を舞い重力を操る忍びである土影の手によって辛くも押し留められたものの、流石の老忍者もその影に隠れるようにして迫って来ていたもう一つの隕石には反応出来ない。
一撃目の隕石に対しては何とか気力を保てていた者達も、その背後に隠れていた二つ目の隕石の姿を目の当たりにすれば、一転してその表情を絶望で染め上げる。
――その光景を冷めた視線で見つめながら、己は胸中で小さく嘆息した。
揮う力こそ使い慣れた万華鏡とは別種の物であっても、眼下にて逃げ惑う者達の浮かべる表情はあまりにも見慣れたもの。ただでさえ敵である者達の力など微々たるものでしかなく、特に今の様に圧倒的な力になす術もなくやられていく者達の姿程、己が見飽きた物は無かった。
――――逃げる事も出来ず、自分の身を守る事も叶わず、歯向かう事すら敵わない。
そんな弱い輩になぞ、興味はない。
己が没してからの年月の間にそれなりの実力を持った忍びも生まれてきてはいるだろうが、この程度でやられるというのであれば、わざわざ自分が気にかけてやる価値もなかろう。
己を外法な手段でこの世に呼び戻した術者の思い通りにしてやるのは少々癪だが、忍び連合の者達が己の敵である事に変わりない。ならば今は形だけでも従っておいてやるのが吉といったところか。
そのような事を考えているうちにも、刻一刻と己の呼び寄せた巨石は地上との間の距離を狭めていく。
己が無表情で見守る中、巨石は大地へと激突して数多の忍び達の命を奪いにかかり――そうして大地には哀れな忍び共の骸が転がる事と成る筈……だった。
――――その未曾有の惨劇が、突如として出現した巨木によって遮られるまでは。
轟音と共に大きく揺れた大地より爆発的な生命力の迸りと共に芽吹いて、その太く雄々しい幹で二つの巨石を絡めとり、青々とした若葉を茂らせた――天をも覆わんばかりの見事な大樹。
中天に差し掛かった陽光に照らされ、青々とした若葉が木漏れ日混じりに宝石の様に煌めく。
それまでは荒野としか評しようのなかった戦場が、一瞬にして新緑の大樹が根付く緑の繁茂する大地へと変貌していた。
目を見開く――それまで漫然と出来ていた、息を吸うと言う行為すら脳裏から綺麗に消え去った。
まさか、いや、そんな筈は無い。
あり得ないと思いつつも、己の直感は唯一人の存在を示して止まなかった。
「な、なんだ……!」
「助かったのか、にしても、これは一体……!?」
「木……? 馬鹿な、いつの間に!」
誰もが驚愕で目を剥く中、己が脳裏に浮か
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