一家団欒
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。わかったよ。絶対に玲音に勝って驚かせてみせるからね」
「期待してるよ」
僕たちはなんとなく可笑しくなり、三人で少し笑い合った。
それから二、三の言葉を交わして、僕は言った。
「じゃあもう僕は練習に戻るね」
「そうですか。なら私たちはそろそろ帰りますね」
「うん」
「早く追い付けるといいね」
そう僕を励ましてから、父さんと母さんは帰った。
それを見送って僕は稽古に戻った。その後、対戦相手を変えた練習試合を何度も繰り返して、今日の稽古は終わった。
***
その日の夜。
僕たち家族は全員で夕飯を作っている。
なぜ一緒に作っているかというと、僕が小学生になってから家事を手伝っていて、今日は料理を手伝う日だからだ。また一ヶ月に一回は僕が一人で料理を作らせてもらうこともある。
今回のメニューはカレーで、これからカレー粉を入れるところだ。
僕はまな板を洗っている父さんに声を掛けた。
「父さん、そこのカレー粉取って」
「はい。牛乳もいるか?」
「うん。ありがとう」
牛乳は我が家のカレーの隠し味だ。たまにチョコレートを使うこともある。
「悠人さん、翔夜。そろそろできそうですか?」
「うん。今カレー粉を溶かし始めたから、もう少しで完成だよ」
そこで洗い物を終わらせた父さんが、手を拭きながら訊ねた。
「美香。食器とスプーンの用意は終わってる?」
「今からしますよ」
「じゃあ僕も手伝うよ。翔夜。カレーの仕上げ、しっかりな」
「もちろん。任せてよ」
僕は自信を持って胸を叩いた。さあ、最後まで油断せずにしっかりと味を整えよう。
しっかりとカレー粉を溶かして牛乳を適量注いで混ぜれば、完成。
「できたっ!」
「できたか。……うん、美味しそうだね」
「美味しそうじゃなくて、美味しいんだよ?」
「そうだったね」
父さんは笑みを溢した。
「ふふふっ。そろそろ装いますか」
「うん」
「そうしよう」
母さんがご飯を、僕がルウを装い、それを父さんがテーブルに運んだ。
すぐに食欲を誘う匂いが辺りに漂う。もう待てそうにない。
「皆座ったね。それじゃあ」
「「「いただきます」」」
僕たちは一口食べた。
「やっぱり美味しいよ」
「美味しいだけじゃなく、全員で作れば楽しくもありますよ。悠人さん」
「そうだね」
このまま放っておくと、年甲斐もなく二人だけの空間に入っていってしまうので、僕はそれを阻止するために口を開いた。
「それじゃあ今度は何を作ろうか? 父さん、母さん」
「そうですねえ。揚げ物作りに挑戦してほしいから……かき揚げなんてどうでしょうか?」
「うん。それは楽しみだね」
「ならかき揚げ丼に決定だね」
なんとか家族の会話に戻すことに成功したよう
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