第二章
[8]前話
「森羅万象それぞれにな」
「神々がいて」
「世界の物事の一つ一つを司っている」
「では私達が生まれた」
「柳やシラカバにもな」
「神がいるのね」
「先日他ならぬ柳から聞いた」
自分が生まれたその木からというのだ。
「それで知ったが」
「柳にも神がいて」
「シラカバにも空にも大地にも太陽にもだ」
「そうだったのね」
「だが一つどんな神も司っていないものがある」
男は真顔で言った。
「海だ」
「海には神がいないのね」
「そうなのだ、だからだ」
男はさらに言った。
「私達がだ」
「海の神になるのね」
「そうならないか、二人で」
「そうね」
女は男の言葉に頷いた。
「私達のこの場での役目は終わったし」
「今度はな」
「海の神になって」
「そしてだ」
「海を司るのね」
「そうしないか」
「そうね、もう人も生きものも大丈夫だし」
女は男の提案に頷いて述べた。
「そのうえで海に司る神がいないなら」
「いいな」
「ええ、では海に入りましょう」
「我々が生み出した子供達に別れを告げてな」
「そのうえで」
夫婦で話してだった。
彼等は子供達に自分達の考えを話した、すると青い目の子供達の子孫である人間達も禿げた子供達の子孫である生きもの達もだ。
それならと応えた、そのうえで彼等に言った。
「ではこれからはです」
「海の恵みを貴びます」
「そのうえで暮らしていきます」
「そうさせて頂きます」
「それではな、今から海に入る」
男が彼等に父として応えた。
「以後は海の恵みを存分に得るのだ」
「津波があったら逃げるのよ」
女は母として子供達に告げた。
「その前は海が荒れてわかる様にするから」
「わかりました、ではです」
「これからは海の恵みをいただきます」
「そして海が荒れたら逃げます」
「その様にして生きていきます」
「海を貴んで」
子供達は口々に応えた、そしてだった。
彼等の親達が海に入るのを見送った、親達も彼等にこれからは海で頼る様に言って海に入った。そうしてだった。
以後二人は海の神として海を司りその恵みを人々に与え危険を知らせる様になった。人間達も他の生きもの達もこのことに深く感謝して今に至る。サハリンに古くから伝わる話である。木から生まれた男女が海の神になるという。
海と木から生まれた男女 完
2023・4・12
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