第一章
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運命論者
佐竹小次郎は運命を信じている、その為災害が起こっても泰然自若としてこう言うのが常であった。
「今回の地震もな」
「運命か」
「ああ、起こる様にな」
会社の同僚の宇都宮尚嗣に話した、黒髪をオールバックにして前を少し垂らした面長の顔に切れ長の目がある。唇は薄く色黒で背は一七五位で痩せている。
「決まっていたんだよ」
「今度の地震もか」
「世の中で起こることは」
全てというのだ。
「あらかじめな」
「運命でか」
「決まっているんだ、予定説ってあるな」
キリスト教カルヴァン派のそれも話した。
「これにある通りな」
「人間の一生もか」
「全部運命でな」
これでとだ、色白で四角い顔に眼鏡をかけたきりっとした顔立ちに黒髪を奇麗にセットした宇都宮に話した。背は佐竹と同じ位だが身体はより痩せている。
「決まってるんだよ」
「天国に行くのも地獄に落ちるのも」
「全部な」
それこそというのだ。
「決まっていて災害も戦争もな」
「全部か」
「運命が決めているんだ、神様や仏様がな」
「だから人間はその中で生きるしかないか」
「ああ、ただな」
ここでだ、佐竹は宇都宮に真面目な顔で話した。
「人間は運命を知らないし決められないんだ」
「神様仏様の決めることでか」
「何もかも運命だって諦めるかっていうとな」
それはというと。
「今俺は予定説を言ったな」
「カルヴァン派のな」
宇都宮もそれはと答えた。
「確かに言ったな」
「ああ、人間の運命は決まっていてもな」
「その中で頑張れ、だな」
「神様仏様から与えられた状況でな」
その中でというのだ。
「仕事なり何でもな」
「頑張ることか」
「カルヴァン派じゃないけれどな、俺は」
佐竹は仏教徒だ、宗派は臨済宗である。
「そうだと思う、だからな」
「今日もか」
「やれることやるな」
宇都宮に微笑んで言ってだった。
佐竹は自分の仕事に家庭のことを頑張った、そして妻の唯にもよく運命のことを話した。だがそれでもだった。
ある息子の隆宏自分そっくりの顔立ちと肌の色の中学生になったばかりの彼がリビングで見ている本を見て言った。
「ああ、そうした本はあてにならないぞ」
「予言は?」
「当たることはな」
予言がというのだ。
「殆どないからな」
「そうなのかよ、お父さん」
「お父さんが子供の頃ノストラダムスが話題になったんだ」
息子に冷静な顔で述べた。
「予言者でな」
「そうだったんだな」
「一九九九年七月に人類が滅亡するってな」
二十世紀後半に流行ったこの話をするのだった。
「よく言われてたんだ」
「そうだったんだな」
「けれど今もこうしてな」
「人間いる
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