第一章
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愛する木
ヴィンセント=ゴッホは絵を描き続けていた、大量の絵の具を筆に付けると力任せにキャンバスに描いていく。
絵は絵の具が浮き出てかつ現職が鮮やかで異様なまでに目立つ絵だ、絵は売れないが見る者は増えていった。
「これはいいな」
「ああ、革命と言っていい」
「この絵は評判になるぞ」
「すぐにそうなるぞ」
こう話す者が出ていた、そうした者が次第に増えていったが当のゴッホの耳には入っていなかった。
彼はひたすら描いていた、自身のアトリエにおいてそうしていた。赤い縮れた噛みと髭が目立つ細面の顔はいつも絵を向いていた。
その彼にだ、弟のテオ兄と違い四角い穏やかな顔立ちの彼はある日兄の絵を見て首を傾げさせて言った。
「兄さん、前から思っていたけれど」
「どうしたんだ?」
「いや、兄さんは色々な絵を描いているけれど」
その絵達を見つつ言うのだった。
「糸杉の絵が多いね」
「好きだからね」
ゴッホは今も描いている、そうしつつ弟に応えた。
「糸杉の木が」
「それでなんだ」
「そう、僕は描いているんだ」
見れば今も糸杉の絵を描いている。
「こうしてね」
「糸杉はね」
弟は兄が描くくねりつつも伸びている糸杉達を見つつ言った、木というよりは燃え盛る火緑色のそれに見える。
「あまりいい木じゃないんじゃないかな」
「死ぬ感じだからだね」
「うん、どうしてもね」
「いや、だからだよ」
ゴッホは緑色の火達を描きつつ弟に答えた。
「僕は糸杉が好きなんだ」
「死を感じるからかい」
「死ぬということは生きているということだね」
「裏返すとだね」
「そうだよ、生きるからこそ死ぬんだ」
「じゃあその糸杉は命なのかな」
「燃え盛る命なんだ」
糸杉をキャンバスと戦う様にして描きながら答えた。
「まさにね」
「そうなるんだ」
「そう、だからだよ」
「兄さんは糸杉を描くんだ」
「今そうしていてね」
「これからも」
「僕はそうするよ、僕は命を描いているんだ」
こう言うのだった。
「だから描くよ、向日葵も描いて」
「そして糸杉も」
「描くよ、僕が死ぬまでね」
「そんな不吉なことは」
「いや、人間は必ず死ぬ」
ゴッホは自分の言葉を否定しようとした弟に返した。
「生きているからこそ、そして死んで」
「そうしてなんだね」
「最後の審判を受けるけれど」
キリスト教の教えにあるそれをというのだ。
「しかしね」
「それでもなのかい」
「そう、それまでは生きているんだ」
「死ぬまで」
「それまでの命、その姿をだよ」
「兄さんは描いていて」
「糸杉もだよ」
まさに今の様にというのだ。
「描くよ」
「そうしていくんだね」
「この命が
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