第二章
[8]前話
その場の上座に自分の食事を持ってきて座ろうとした、それでまた親戚達から言われた。
「そこは喪主と家族の人達の場所だぞ」
「あんたが座る場所はあるだろ」
「何勝手に上座に上がってるんだ」
「自分の場所にいろ」
「またやったか」
草薙はまた嫌そうに言った、自分の二番目の叔父とその家族が上座で嫌そうな顔をするのも見ながら。
「全く、何なんだ」
「あの、ご家族でもないのに上座って」
「だからああした人なんだ」
こう佐藤に答えた。
「あの人は」
「そういうことですか」
「さっきの喪主やるって言ったのと同じでな」
「そんな人なんですね」
「葬式だぞ、今」
草薙は横の席の佐藤に忌々し気に言った。
「そんなな」
「ああしてですね」
「喪主とか上座とか立場じゃなくてな」
「亡くなった人を悼むことですよね」
「弔ってな、自分がじゃないんだ」
葬式はというのだ。
「亡くなった人だよ、そんな場所でああしたことするなんてな」
「駄目ですよね」
「嫌なもの見たよ、ただな」
それでもとだ、草薙は言った。
「ああはなるまいってな」
「そうですね」
「思えたよ、全く葬式ってのは色々見るっていうけれどな」
「ああしたものも見られるんですね」
「そうした場所ってことだな」
自分の叔父、親戚達から自分の席に戻されそれからは不貞腐れている彼を見つつだ。草薙は佐藤に言った。
その叔父は食事が終わると不貞腐れたまま帰った、そしてその葬式の後草薙は佐藤に会社の中で言った。
「あの人遂に寺にもいられなくなってな」
「お世話になってるのに不平不満ばかりで」
「いい加減匙投げられてな」
「追い出されましたか」
「ああ、そうなってな」
それでというのだ。
「今行方不明だ」
「そうですか」
「葬式の場でああしたことする人なんてな」
「碌なものじゃないですか」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「そうなったんだよ、本当にああはなりたくないな」
「そうですね、お葬式の場ではですね」
「亡くなった人を悼んで弔う」
「自分がじゃないですね」
「自分がってなったらそれで終わりだよ」
それこそというのだ。
「もうな」
「そういうのが見られたんですね、あのお葬式」
「そうさ、勉強になったか?」
「はい、いい思いはしなかったですが」
「親戚の恥晒したしな」
草薙は自分のことも言った。
「まあ佐藤さんが勉強になったらな」
「いいですか」
「ああ、それならな」
こう言うのだった、そうして仕事に入った。二人共葬式のことは仕事の時も心に留めていっかりと人生を生きていった。
お葬式で学んだこと 完
2023・7・24
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