第一章
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お葬式で学んだこと
会社の上司の祖父が亡くなってだった、佐藤桂はその葬式に出席した。
黒髪をショートにしていて丸顔で細い目を持ち優しい顔立ちだ、背は一五五位で程よいスタイルである。
葬式の場なので静かにしていたが。
不意に上司の草薙幸男大柄で逞しい身体を持ち黒髪を短く刈り込んでいて細いしっかりした光を放つ優しい目と引き締まった唇に長方形の顔を持つ彼が嫌な顔をして言った。
「来たか」
「どうしたんですか？」
「ああ、うちの叔父がな」
草薙は佐藤に苦い顔で応えた。
「来たんだよ」
「叔父さんってあの人ですか」
「ああ」
草薙は今場に来た眼鏡をかけてやや面長で髪の毛を左で分けた中背で太り気味でふんぞり返っている初老の男を見つつ答えた。
「そうなんだ、親父の一番上の兄さんでな」
「主任の叔父さんですか」
「そうなんだけれどな」
「何かあるんですか」
「見ていればわかるよ」
草薙はこれ以上言わなかった、佐藤はいつも優しく怒ったことも不平も悪口も言わないいつも笑顔の草薙がそう言ったことに内心驚きつつだった。
ここは彼の言う通りにしようと思った、すると。
「わしが長男だから喪主するな」
「喪主はもう決まったぞ」
「あんた仕事なくて今お世話になってる場所の悪口ばかり言ってるでしょ」
「それで明日にもそこから追い出されそうだろ」
「そんなので喪主出来るか」
「奥さんにも逃げられてるのに」
「隅っこにでも言ってろ」
親戚が彼に寄ってたかって言ってだった。
喪主は草薙の父がそのまま務めていたが。
「あの、長男だから喪主って」
「長男だから一番偉いって思ってるんだ」
草薙は佐藤に話した、彼は叔父のところには行っておらず会社の同僚達と一緒に喪服を着ている。勿論佐藤も喪服である。
「昔からな」
「長男だからですか」
「それで相当甘やかされてな、母親に」
それでというのだ。
「五十過ぎでああだよ」
「そうですか」
「働かないでいつもふんぞり返ってな」
そうしてというのだ。
「偉そうで図々しくて人の家にいきなり来て好き放題するんだ」
「まるで子供ですね」
「悪い意味でな、それで奥さんにも逃げられてな」
そうなってというのだ。
「十年以上食わせてもらってたのに感謝もしないで恨みごとばかり言うんだ」
「感謝の気持ちないんですね」
「全くな、それで今お寺に住ませてもらっても」
「働かないで、ですか」
「仏教の勉強も信心もしなくてな」
そうしてというのだ。
「お寺や宗派やそこの人達の文句ばかりだよ」
「そんな人ですか」
「それでああしてな」
「お葬式でもですか」
「いきなりああ言い出したんだよ」
そうだったというのだ。
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