第二章
[8]前話
「どうだ?実は知り合いのお寺が跡継ぎ探してるんだ」
「それで俺にか」
「お前さえよかったらな」
「大学はそっちに行ってか」
「ならないか?」
「丸儲けならな」
にやりと笑ってだった。
原はその話を受けることにした、幸いその寺の宗派の大学の宗教学科に入るだけの学力はありあっさり入学出来てだった。
入学と共にその寺に婿養子兼跡継ぎとして入ったが。
「いや、修行や学問は当然でさ」
「お寺ですからね」
「ああ、けれどな」
原は名字は中川になった、それで妻となったまだ籍は入れていないが高校生の綾香に応えた。ふわりとした黒髪をセミロングにし大きな可愛らしい目と小さなピンクの唇を持つ一五七位の背のスタイルのいい娘である。
「何かとな」
「大変ですよね」
「お寺の中の仕事全部やってな」
掃除だの何だのだ。
「肉体労働もあってな」
「結構体力使いますよね」
「それで信者さんのお話とか聞いてるとな」
「大変ですね」
「悩みとか心配事とかな」
原あらため中川は溜息混じりに述べた。
「そういうこと聞くとな」
「滅入りますね」
「人生って重いな」
人のそれはというのだ。
「本当にな」
「その通りですね」
「自分の修行とか学問はいいんだよ」
信仰心はある彼はだ。
「自分のことだからな」
「楽ですか」
「気がな、けれどな」
それでもというのだ。
「人のことになるとな」
「重いですよね」
「ああ、お葬式とかの時にお経読んだりするだけじゃないんだな」
妻にしみじみとした口調で述べた。
「お坊さんってのはな」
「そうなんですよ、坊主丸儲けといいますが」
「税金の話とか厳しいしな」
「はい、何かとです」
「大変だな」
「お坊さんも」
「楽な仕事ってないな」
こうもだ、彼は言ったのだった。
「つくづく」
「それが世の中ですね」
「そうだよな、けれど仏さんの教えっていいな」
ここで信仰心を出した。
「そんな中でもお経唱えて本読むとな」
「救われますか」
「ああ、本当にな。それにな」
今度は妻を見て言った。
「奥さんもいるし」
「学校には断わって周りには内緒で籍入れましたし」
「いいか、じゃあ頑張ってな」
「立派なお坊さんになってくれますか」
「そうなるな」
もう丸儲けだのいう考えはなくなっていた、寺そして僧侶の実態を知ったので。
そのうえで大学に通いつつ寺を継ぐ為の修行をしていった、そうして彼は寺を継いで立派な僧侶となったのだった。
坊主丸儲けじゃない 完
2023・7・23
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