松菜ハルト
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___これを君に___
それは、果たして何年前だっただろうか。
どこかの廃墟。
雨が降りしきる中、その男が前置きなく現れた。
彼は、銀の板のようなものをハルトに差し出してきたのだ。
「何?」
___君には、魔法使いになる資格がある。このベルトを使い、世界を救え___
「……いらない。そんなものが無くても、俺は十分に戦える」
___ファントムの君が守るには限度がある。分かっているだろう?___
男の指摘に、ハルトは自らの手を見下ろした。
先の戦闘。誰かを絶望させようとしていた同族を殺した手だが、受けた傷は大きく、今こうして右腕も傷ついていた。
___ディケイド___
「?」
突然男が口にした謎の単語。
ハルトの反応を見た男が、ニタリと笑みを強くした。
___いずれ、この世界にも現れる。たかがファントムごときに倒せると思うのか?___
「……」
その言葉にむっとしたハルトは、大股で男に近づく。
「俺じゃ倒せないとでも?」
ハルトは、脅すように腕だけを怪物のものに変身させる。その鉤爪を男の首元に付きつけるが、彼は少しも動じない。
___ああ。倒せんさ。だからこれを……世界を救うための力だ___
男はそう言って、ハルトの胸元へその板を押し付ける。
中心に手のような形のオブジェが取り付けられたそれ。
ハルトは怪物の手のまま、その物品を手にする。
これがハルトと、長年の相棒となるベルト、ウィザードライバーとの出会いだった。
「……懐かしいことを思い出したな」
ハルトはそう言いながら、腰に付いているベルトに手を触れる。
待機状態のウィザードライバー。一見、手のひらの形をしたバックルだが、それは指輪を介して、ウィザードライバーそのものに変身する。
あの日、それを腰に付けた瞬間から、ハルトはドラゴンではなく、ウィザードとなった。
だが今、その時から使い続けてきた指輪は一つもない。
木陰で仮眠を取ったハルトは、回復した体を確認するように腕を動かす。
ついさっきまで、胸元に開いていた風穴。それはすでに完治していた。
その時、体が空腹を告げた。
「腹……減ったな……」
だが幸いにも、数歩進んだだけで、ハルトは河原にぶつかった。
川の中を見下ろせば、涼しそうに川魚が泳いでいる。
赤い眼となったハルトは、その腕だけを怪物のものに変化させる。
熊が魚を取るように、ハルトは鋭い鉤爪を川の中に叩き込む。
すると、掬い上げられた魚は、ハルトの背後に落ちてくる。柔らかい水中から硬い河原に出た魚へ、木の棒でトドメを刺す。
全身をファントムに変え、口から炎を吐き、空中で魚を炙る。
あっと
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