松菜ハルト
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いう間に焼き魚になったそれ。熱さを感じながらも尾びれを掴み、人間の姿に戻ったハルトは頬張る。
「……こういう、野宿専用の食事も久しぶりだな。味は感じないけど」
ファントムには、味覚がない。
タンパク質が分解されアミノ酸が発生しようが、ハルトにとっては殺菌作用以上の変化はない。
そう、これまでも。見滝原の仲間たちと食事を取り囲んだ時も、みんなが美味しいと舌鼓を打った時も、ハルトだけはその意味が理解できなかったのだ。
やがて、焼き魚を全て平らげ、骨を川に流したハルトは、あてもなく川の上流へ足を向ける。
「……あ、あった」
別段それを探していたわけではない。
だが、足元にある白い石のうち一つには、底面が綺麗に水平に磨かれたものがあったのだ。
それを拾い上げたハルトは、何となく投げてみる。
水を切る石は、やがて川の中心で沈んでいく。
水面に波紋を作ったその地点を見つめていたハルトは、やがてその水面が浮かび上がっていくことに気付く。
「あれは……?」
水面はやがて人の形となり、ハルトのよく知る顔を象っていく。
「やっほー。魔法使いさん」
美樹さやか。
見滝原中学の制服のままの彼女は、静かにハルトに近づいていく。
「さやかちゃん……何でこんな山の中に?」
「ただの散歩だよ。放課後の散歩。学校に残っていると、まどかや転校生に掴まって面倒なこと聞かれそうだし」
面倒なこと。
彼女が友人であるはずのまどかと関わりを避けている理由が、考えるよりも先にその答えが浮かび上がってしまった。
「もしかして……まどかちゃんとほむらちゃんに、ファントムであることが……」
「バレちゃったんだよね、あたしたちの秘密」
さやかの声が、途端に冷たくなった。
さやかが絶望し、生み出されたファントム、マーメイド。
その姿が、よりにもよって彼女の友に知られてしまったのか。
「魔法使いさんはすごいなあ。よっぽど隠し事が巧かったんだね」
さやかはそう言いながら、川から足を踏み出す。
一歩だけ、川原を湿らせたあと、彼女の足場は完全に乾ききっていた。
「なるほどね。やっとわかったよ。なんでアンタが、妙にあたしに接してきたのか……」
「……」
彼女の言葉に、ハルトは黙っていた。
さやかは首を静かに振る。
「同族だったからでしょ? アンタもあたしと同じ、ファントムだった」
「そうだよ」
「それにしてもひどいね。アンタ、ずっとファントムを倒して旅をしてきたんでしょ?」
「……」
「どんな気持ちだったの? 人間のフリをしながら同族を倒すのって? それとも……」
その時。
ハルトの首元に、冷たいものが当てられる。
さやかの手
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