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ボッタクリじゃなくて
第二章

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「あっちから見ればですよ」
「吹けば飛ぶ様な」
「雑魚みたいなお店で」
「一見さんお断りの」
「そんなとこの食材ですから」
 そうした牡蠣だからだというのだ。
「あの値段なんですよ」
「そうですか」
「数量限定で」
 それでというのだ。
「一万円です、どうですか?」
「お金ないですから」
 早勢は即座に答えた。
「ですから」
「遠慮ということで」
「はい、普通の牡蠣フライ頼みます」
 牡蠣フライは牡蠣フライでもというのだ。
「あとビールと枝豆を」
「わかりました」  
 店長は笑顔で応えてだった。
 そのうえで早勢が注文した品をすぐに出してきた、彼はジョッキのビールを飲んで枝豆と牡蠣フライも楽しんだ。
 暫くしてだ、早勢はまたこの店に来たが。
 牡蠣フライの品書きは一つになっていた、普通の居酒屋の値段のものに。彼はそれを見てからカウンターの席で店長に尋ねた。
「あの牡蠣フライは」
「いや、売れました」
「注文来たんですか」
「どれだけ美味しいか確かめたいってお客様がおられて」
 それでというのだ。
「注文されて」
「一万円で」
「はい、それで召し上がられて」
 その高い牡蠣フライをというのだ。
「ものが違うと言っておられました」
「そうでしたか」
「いや、私も試しに一個食べてみたんですが」
 その牡蠣フライをというのだ。
「違いましたね」
「味がですか」
「京都の高級料亭の食材になりますと」
 それこそというのだ。
「もうです」
「ものが違いますか」
「はい、本当に」
「一万円の価値はありますか」
「ありました、ただうちは普通の居酒屋なんで」
 少し苦笑いになってだ、店長は早勢に話した。
「ああしたものは」
「これからはですね」
「扱わないですね」
「そうですよね、じゃあ今日は焼き鳥お願いします」
 こう言ってそうしてだった。
 早勢は笑って焼き鳥とビールを注文した、そしてこの日はこの二つを楽しんだ。どちらも居酒屋の味と値段で充分楽しめた。


ボッタクリじゃなくて   完


                2023・7・20
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