第一章
[2]次話
ボッタクリじゃなくて
居酒屋のそのメニューの値段を見てだった。
早勢実朝はカウンターの店長に思わず問うた。
「嘘ですよね」
「そう思いますよね」
三十代位の若い店長だった、面長できりっとした顔が黒い店の服とエプロンそれに帽子が似合っている。
「これが」
「はい、幾ら何でもですよ」
早勢はさらに言った、長方形の顔で小さな切れ長の目に薄い唇である。黒髪をスポーツ刈りにしていて背は一七五位で痩せている。居酒屋のカウンターの席に座って店の壁にある品書きのあるメニューと値段を見ての言葉だ。
「牡蠣フライが一万って」
「よく言われるんですよ」
店長も否定しなかった。
「それで隣の牡蠣フライがですね」
「普通の値段ですね」
「だから余計にです」
「言われますか」
「そうなんです」
「そもそも牡蠣フライが二つあるのも」
これもというのだ。
「おかしいですしね」
「それあれなんです」
店長は真顔で言ってきた。
「あの牡蠣が特別で」
「特別ですか」
「実はとある料亭から貰ったもので」
「料亭ですか」
「色々あってこっちに入ったんですが」
店長は早勢に難しい顔で話した。
「それが随分です」
「高かったんですか」
「料亭も特別の」
「高級料亭ですか」
「京都の。ここ難波の居酒屋なんて」
それこそというのだ。
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