第八十六話 海遊館に二人でその十三
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「こうしたお店に来て」
「食べてたのね」
「お酒抜きでね」
それでというのだ。
「そうかも知れないよ」
「そうしたお店なのね」
「まあこの辺りは歩いていたと思うよ」
「野村さんも他の南海の選手の人達も」
「対戦相手の人達もね」
彼等もというのだ。
「そうかもね」
「そうなのね」
「織田作さんが歩いて」
そしてというのだ。
「昔の野球選手の人達もね」
「歩いていた場所ね」
「そうかもね」
こう言うのだった。
「この辺りの道それにお店もね」
「そうした人達が入って」
「食べていたかもね」
「そう考えると面白いわね」
「そうだね、それも歴史だよね」
「大阪のね。何かそうしたことを考えると」
留奈は自分のオムライスをさらに食べて言った。
「尚更美味しいわね」
「歴史の味がするとか?」
「あっ、そう言ったらね」
それならとだ、留奈は笑って応えた。
「そうなるかもね」
「そうなんだね」
「そう思ったけどね」
「昭和の」
「ええ、若しかして」
留奈はこうも思った。
「ここで芸人さんや野球選手や作家さんもね」
「食べていたかも知れないね」
「実際自由軒では食べてたしね」
織田作之助がというのだ。
「すぐ傍の」
「うん、だったらね」
「ここでもね」
「誰か食べていて今もね」
「食べてるかも知れないのね」
「織田作さんは自由軒のカレーがお気に入りだったけれど」
それこそ毎日の様に通っていたという、お店の中には織田作死んでカレー残すという言葉がある程度である。
「それでもね」
「このお店にもなのね」
「来ていたかもね」
「そうかも知れないのね」
「あの人結核だったからね」
伊東はこのことは残念そうに話した。
「三十四歳で亡くなったんだよね」
「若いわよね」
「今は助かるけれど」
「昔は結核になったら死んでたわね」
「確実にね」
「そうだったのよね」
「それで織田作さんもね」
彼もというのだ。
「学生時代に結核になって」
「亡くなったのよね」
「本当に若くしてだよ」
伊東はさらに残念そうに言った。
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