第二章
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「いつもね」
「しっかりしてるな」
「そうしたこともしてるなんてな」
「凄いな」
友人達はゲームをしながらそんな彼に唸った、だが。
ある日だ、親戚が突然の病気で多額の手術代が必要になった時に彼は貯金をしている金を無言で差し出した、そうして言った。
「足りないならまた言ってね」
「えっ、いいのか?」
「あんた出してくれるの」
「他の親戚の人が出しても足りないよね」
微笑んでだ、彼は言うのだった。
「だからね」
「それでなんだ」
「出してくれるの」
「お父さんとお母さんも言ってるしね」
中山は微笑んで言った。
「普段は節約していてもか」
「あの人達も言ってるのね」
「こうした時に備えてだから」
「由来君のお父さんとお母さんも出してくれたが」
「何も言わないで」
「それはどうしてか」
「こうした時の為なのね」
「そう、だからね」
えそれでというのだ。
「受け取ってよ返さなくていいから」
「有り難う」
「恩に着るわ」
手術を受ける親戚の両親は涙を流して喜んだ、だが中山はそんな二人に優しく微笑んでいるだけだった。
そして普段の生活はというと。
「今度はもやしか」
「それで形が悪くて安い野菜に半額の肉を使ってか」
「野菜炒め作ってか」
「昨日はそれを夕食にしてね」
中山は大学で昼食を食べつつ共に食べている友人達に話した、周りはコンビニ弁当や食堂のパン等を食べている。
「残りはこうしてだよ」
「弁当のおかずか」
「それにしてるんだな」
「そうなんだ、これがね」
本当にというのだ。
「いい節約になるから」
「だからか」
「自分でそういうの買って料理してるんだな」
「そうだよ、これからもこうしていくよ」
笑顔で言って食べた、節約を念頭に置いたその料理は彼にとっては美味いものだった。彼は大学を卒業し就職してからもそうした生活を続けたが。
いざという時は何も言わず出した、そうして生きていった。そんな彼についてお金のことで悪く言う者は誰もいなかった。
形の悪い野菜はいい 完
2023・7・19
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