第八幕その十
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「お金に困っていたんだ」
「そこに幕府から何かと言われていたんだよね」
「普請を命じられたり」
「それで尚更だね」
「お金に困っていたね」
「愛知県と岐阜県の治水なんかもね」
こちらもというのです。
「命じられて大変な人手とお金をかけて」
「やったんだ」
「そんなこともあったんだ」
「薩摩藩には」
「そうなんだ、密貿易に奄美大島産のお砂糖を売って」
そうしてというのです。
「お金を手に入れていたけれど」
「その密貿易だね」
「若し幕府に見付かったらね」
「大変だよね」
「そして何かと普請とかを命じられたのはね」
それはどうしてかといいますと。
「薩摩藩は幕府に敵視されていたんだ」
「そうだったんだ」
「それで普請とか言われて」
「それでなのね」
「お金や人手を使わさせられて」
そうしてというのです。
「力を消耗させられていたよ、熊本城はね」
熊本県のこのお城はといいますと。
「薩摩藩への軍事基地でもあったんだ」
「熊本を治める拠点で」
「それでなんだ」
「軍事基地でもあったんだ」
「薩摩藩に対する」
「そうだよ、姫路城が豊臣家の大坂城への備えで西国への軍事基地であった様に」
その様にというのです。
「熊本城はね」
「薩摩藩への備えだったんだ」
「軍事基地だったんだね」
「この藩への」
「それだけ幕府は薩摩藩を敵視していたんだ」
そうだったというのです。
「長州藩や仙台藩と共にね」
「幕府の藩の中にあっても」
「薩摩藩はそうみなされていたのね」
「つまり幕府の仮想敵国だね」
「要するに」
「そうだよ、文字通りそうでね」
幕府から見てというのです。
「凄くね」
「敵視されていて」
「そうであって」
「それでだね」
「幕府から隠密もよく来たんだ」
そうだったというのです。
「内情を調べる為にね」
「あっ、その隠密を見破る」
「その為にもなんだ」
「薩摩藩は言葉をわかりにくくした」
「そうだったんだ」
「そう、聞いてもわからない様にして」
そうしてというのです。
「若し潜り込んできてもね」
「言葉でわかるね」
「そして若しも幕府の隠密なら」
「見破られたら」
「示現流や直新陰流の錆となったよ」
そうなったというのです。
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