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冥王来訪
第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
少女の戸惑い その2
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ている言葉が、日本語で、なおかつ突拍子もないものだったからだ。
「これは困ったことになった。今度は本当で軍法会議ものだ」
「全くです。こんな街中で拳銃騒ぎとは……」
「こんな時に、よく笑えるものだね」
「鎧衣さん。こんな滑稽なことはめったにありませんよ」
 はてと、マサキはそれへ眼をそそいでいた様子である。
この時代の東ドイツには、東洋人、特に日本人は滅多に居ないからである。

 マサキは背広を着て、帽子をかぶった二人組を凝視した。
やがて、白銀と鎧衣であることが分かり、ほっとして、そばに歩いて行った。
()しからん話だろう。
俺が、東ドイツ政府に訴えて、あの警備隊員を銃殺刑に処してやる」
鎧衣は、理解し(がた)い顔をして、
「今の行動は、君にとって賢明とは思えないが……」
「賢明ならば、最初から、こんなところへ何も知らずに出かけてこないさ」
けれどマサキは、鎧衣の忠告に、易々(いい)として、甘んじるふうはなかった。
「だったら、なぜ来たのかね」
鎧衣はいったが、マサキは、むしろ喜ばない様子を示して、
「それについては、俺から直接、議長に伝えるさ」
と、心底のものを吐露するように、答えると、白銀はさらに、
「とりあえず、共和国宮殿に行って、どういう結末になるか、見物してみましょう」
白銀の脇で見ていた鎧衣の顔は、晴れ晴れとしていた。
「そのあと、ベルンハルト嬢の案内で、ペルガモン博物館の観光もいいですな」

 マサキは、二人をせかして、国境検問所を後にした。
3人は、周囲の喧騒を心から楽しむ様に、東ベルリンの街中を歩いていた。
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