暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第161話:その身に流れる血を誇りにして
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ったばかりに、適合係数の上昇実験にあてがわれた孤児達の記録……」

 今でもマリアは思い出せる。ガングニールになかなか適合できず、拒絶反応で苦しんだ日々の辛さを。

 ギアが体に馴染まず苦痛に膝を折る度に弱音をナスターシャ教授に吐き、そして何度も厳しい言葉で諭されてきた。

 甘える事を許されなかったあの頃、ナスターシャ教授が時に鬼のように見えた事は今でも鮮明に覚えていた。

「……マム……」

 当時の事を思い出して沈んだ顔になるマリア。
 その横では、キャロルが同じようにエルフナインのコンソールを覗き込んでいた。

「エルフナイン、これは……?」
「これはね、了子さんの手伝いなんだ」

 エルフナインの前のモニターに表示されているのは、ここ最近の奏のバイタルの変移だった。嘗てはマリア達と同じようにLiNKERの薬効に悩まされ、頻繁に体内洗浄を必要としていた奏。
 だがここ最近は、奏のバイタルも随分と安定していた。適合係数も上昇傾向にあるし、何よりもLiNKERの消費量も格段に下がりつつあった。了子はそこに何らかのヒントがあるかもしれないと睨み、こうしてエルフナインに調べてもらっている最中だったのだ。

 キャロルがエルフナインと共にコンソールを覗き込む。一見すると幼い子供が一つしかないテレビの画面を揃って至近距離から見ているような光景に、あおいと調達が頬を綻ばせていた。

 その時、突如車内に警報が鳴り響いた。

「ッ! 多数のアルカノイズの反応ッ! 場所は……、松代第三小学校付近から、風鳴機関本部へ進行中ッ!」

 あおいの報告に切歌達が思わず息を呑んだ。その場所は昼間助けた老婆を連れて行ったところに程近いからだ。厳密には、その近くに退去させられた住民を一時的に集めておく集結地点がある。

「トマトお婆ちゃんを連れて行ったところデスッ!」
「マリアッ!」
「ええッ!」

 報告を聞くなりマリア達3人が即座に動き出す。今の報告に戦おうとしていると勘違いしたエルフナインは、慌てて3人を引き留めようとした。

「いけませんッ! 皆さんにはLiNKERがありませんッ!」
「言っておくけど、奏ちゃん用の奴は使っちゃ駄目だからね? これ以上の負担は掛けられないわ」

 エルフナインと了子の制止の声を背に浴びながらトレーラーから出ようとした彼女達は、同時に入ろうとしてきた弦十郎達と鉢合わせた。

「む……どこへ行くッ!」

 敵襲があった事は弦十郎も知っている。そこから彼もマリア達が戦いに行こうとしていると勘違いしたが、それに対しマリアは即座に首を横に振った。

「敵は翼達に任せるわ。私達は民間人の避難誘導をッ!」

 正直、物は言いようだった。例え避難誘導と言う名目で外に出した
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