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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第161話:その身に流れる血を誇りにして
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み物なんかの差し入れなどである。
だが、現状2人の間にはとても分厚い見えない壁が存在していた。たとえ同じ空間の中に居ても、2人は互いに離れて目も合わせない。と言うよりクリスの方が露骨に透の事を避けていた。
これでは仲直りもへったくれも無い。
「お前達2人の関係に部外者の俺が口出しするのもどうかとは思うが、それでも敢えて言わせてくれ。お前達は一度、しっかりと話し合うべきだ。日本の言葉にもある、口を割って本心で話し合わなければ何時までもこのままだぞ?」
「ガルド、割るのは腹です。口を割るのは隠し事なんかを喋る時に使う言葉ですよ」
「……本当?」
微妙に締まらないガルドの言葉に、透は少し肩から力が抜けたのか苦笑するとメモにペンを走らせた。
〔僕自身、クリスと話すべきだと言うのは分かっています。ただ……〕
「ただ……何だ?」
〔クリスとどう接するのが正しいのか、分からなくなっちゃったんです〕
そうペンを走らせ、彼はクリスを引っ叩いた時の自分の手を見た。今でも思い出せる。あの時クリスの頬を引っ叩いてしまった時の感触と、その時に向けられたクリスの驚愕と絶望、恐れが綯い交ぜになった表情を。そしてその直後に自分を突き飛ばして離れていく彼女の後姿を思い浮かべる度に、透は息苦しさを感じる程胸が締め付けられるような感覚に陥った。
何故あの時、彼女を引っ叩いてしまったのか。未だに後悔している。仕方がない、なんて言い訳もできない。クリスを守るべき自分が彼女を逆に傷付けてしまった事に、彼は自分が憎くて仕方なかった。自制心が働かなければ、今すぐにでもこの手を引き千切ってしまいたい衝動にすら駆られた。
その衝動と、胸の痛みを堪える様に透は己の手を握り締め額に押し付け、目を瞑って俯いた。
苦しみに耐えている彼の姿に、痛ましさを感じてガルドは何も言えなくなる。一方で、アルドは静かに透に近付くと彼の肩に手を置きゆっくりと顔を上げさせた。
「透さん。一つ……聞かせてください」
「?」
「何故……泣かないんですか?」
今の透の顔は今にも泣きそうな程に歪んでいるにも拘らず、その目からは一滴の涙も零れていない。これほど胸が張り裂けそうなほどの苦しみを感じているのなら、涙を流してもおかしくない筈なのにだ。
頑ななまでに涙を流さない透に違和感を感じたアルドが問い掛ければ、彼は再び俯き力無く首を左右に振った。一体今彼がどんな顔をしているのかとアルドが横から覗き込もうとすれば、彼は顔を逸らしてしまう。
何も語らず、ただ頑なに泣かないようにしている。どうやらそこに何かあるらしいことは分かるのだが、生憎とそこから先へは彼も踏み込ませてくれないらしい。
その先へ踏み込む事が出来るのは、恐らくこの世でただ1人。
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