悪
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奈美に太刀打ちすることは困難だった。
それなのに、自分が入っていない偽物のウィザードが、可奈美を倒している。
「我が作り上げたウィザード達には、我の力で能力も底上げ済みじゃ……どうやら、そこの小娘程度では、相手にもならないようじゃ……」
アマダムは余裕の表情を浮かべながら、可奈美に歩み寄っていく。
「このっ!」
苦し紛れの可奈美の斬撃を、アマダムは手首を掴むことで防ぎ、そのまま首を絞め上げる。
「う……ぐっ……」
「可奈美ちゃん!」
徐々に彼女の身体から力が抜けていく。逆に、アマダムが可奈美を持ち上げる力が強まっていく。可奈美の足が地面から離れ、蹴りで抵抗するが、アマダムには全く効果がない。
「可奈美ちゃん! うっ!」
再びフレイムスタイルがハルトへ牙を向く。
腹を蹴り、膝打ちで地面に突き落とす。さらに、その背中を強く踏みつけてきた。
「か……はっ……!」
背中から圧迫するウィザードの足。だが、地面との挟み撃ちになりながらも、ハルトは可奈美へ手を伸ばす。だが、全身の傷と、ウィザードフレイムスタイルのせいで、これ以上動けない。
そうしている間にも、可奈美はどんどん吐く息が細くなっていく。バタバタと動かす足も、だんだん弱っていく。
「ぬわっはははははは! いい! これはいい! ウィザードが苦悶の表情でおじゃる!」
「や……め……ろ……! アマダム……!」
可奈美の顔が、どんどん弱っていく。薄ら目になりながらも、ハルトへ手を伸ばしてきた。
向けた手は遥か遠く、とても届かない。
「やめろ……! やめろ……!」
「絶望しろウィザード。その苦痛の顔を、もっと我に見せておくれ!」
「あ……っ がっ……」
アマダムが、可奈美の首をどんどん持ち上げていく。
苦悶の声を漏らす可奈美。アマダムを蹴って抵抗する足から、だんだんと力が抜けていく。その手から千鳥が零れ、甲高い音が響いた。
そして。
黒い目が、赤く光った。
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
赤い、何かが、地上を走った。
指輪のない、生身のハルト。
その全身より、赤いオーラが放たれる。
それは、背中に乗るフレイムを放り投げ、誰もが戦いを中断させ、大きく後退させるほどのものであった。
「な、何だ?」
おちゃらけた口調をなくしたアマダムもこちらを凝視している。
その中で、ハルトはゆらりと立ち上がった。
そのオーラと同じ色調の文様が、ハルトの顔に浮かび上がる。
それを見て、可奈美は薄ら目を大きく開き、アマダムは口をガタガタと震わせる。
「まさか……貴様……!」
「うおおおおおおおお
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