第八十五話 兄に言われてその十二
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「本当にね」
「もっと負けて欲しいわね」
「巨人には無様な負けがよく似合うってね」
「そう言われてるわね」
「実際そうだしね」
「そうそう、強かったり恰好よかったり」
留奈は巨人のそうした姿を想像し忌々し気に言った、何でもかつての巨人はそう妄想されていたみたいだとも思いつつだった。
「そんな巨人はね」
「似合わないよ」
「そうね、巨人は弱い」
「そうでないとね」
「巨人じゃないわ」
「昨日なんかエラー五つも出て」
一試合でというのだ。
「ピッチャーは二十安打打たれてフォアボール十二」
「凄いわね」
「もう毎回得点されて」
そしてというのだ。
「物凄くいい試合だったみたいだよ」
「流石巨人いい負け方ね」
「ただ七回に一点入って」
伊東はこのことは忌々し気に話した。
「三試合ぶりに得点したから」
「そのことは残念ね」
「そう思うよね」
「ええ、そのことは残念ね」
留奈も心から答えた。
「巨人はそこで完封にもならないとね」
「駄目だからね」
「そうなれば完璧だったのに」
「やっぱり巨人は最高に恰好悪くないと」
さもないと、というのだ。
「駄目だね」
「ずっとね」
「これからもみっともないチームであって欲しいよ」
「私も心から思うわ」
「もっともっと何もかもが最悪の」
そうしたというのだ。
「腐りきってもいて」
「いいところなんか何もないね」
「ファンやヤクザ屋さんとか半グレの」
「ドキュンばかりのね」
兄との話を思い出しつつこの言葉を出した。
「そんなチームであって欲しいわね」
「そうだね、巨人に長所なんてね」
「いらないのよね」
「全くね」
それこそというのだ。
「そうだよ」
「じゃあ今日も負けて」
「これからもね」
「どんどん負けて欲しいわね」
「今年も百敗は間違いないし」
当然あまりにも弱いからである。
「このままね」
「ずっとよね」
「負けて負けて負けまくって」
そうなってというのだ。
「只の最下位じゃなくて」
「ダントツのね」
「折角二十年連続百敗で」
勝率一割台なら当然のことである。
「オープン戦、二軍、交流戦もね」
「二十年連続最下位よね」
「どれもね、全てにおいてね」
「最下位コンプリートしてるから」
「だったらね」
それならというのだ。
「もうね」
「このままずっとよね」
「最下位であって欲しいね」
「ええ、何もかもがね」
「巨人が弱いと」
伊東は考える声で話した。
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