第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
シュタージの資金源 その1
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らつらと、そんなことを考えていた時である。
ふと、階段を下りる足を止め、階下を歩く二人の男女に目を留めたのだ。
マサキの顔色が変わったことに気が付いたグラーフは、
「博士、どうなさいましたか」
マサキの顔色が変わったことに気が付いて、声をかけてきたのだ。
マサキの視線の先にあったのは、迷彩服を着て歩くアイリスディーナと一緒にいた偉丈夫だった。
件の男は、栗色の髪をし、中尉の階級章を付けた灰色の勤務服を着て、目をきらりとかがやいて、アイリスと楽し気に話をしていた。
そのさまを見た、マサキの内心は穏やかでなかった。
嫉妬という感情とは、ほぼ無縁の彼であったが、この時ばかりは違った。
まるで業火の傍にいる様に、体が焼けんばかりに全身の血がたぎった。
(あの小童は、何者だ。親しげに話すアイリスもアイリスだ。
俺という男がいながら……)
マサキは、前の世界で男女の三角関係を用いて、鉄甲龍のクローン人間を苦しめた男である。
塞臥と祗鎗という二人の男が、ロクフェルという一人の女をめぐって仲たがいするように遺伝子操作をして楽しんだ男でもある。
だが、そのマサキ自身が、それに似た状況に置かれるとは思いもよらなかったのだ。
マサキは、脇にいて心配するグラーフに、安心させるような声をかける。
「すまなかったな。俺は駅まで歩いて帰させてもらうぜ」
「えっ、博士。お車の方は……」
「あばよ!」
そういって、精いっぱいの笑顔を作って、作戦本部を後にした。
駅までの道中、マサキは、己のふがいなさを恥じらう様にうつ向いていた。
(何と言う事だ。この俺があんな小童に負けるとは……
嫉妬で気が違ってしまいそうだ。こんなにもアイリスに惹かれるなんって……)
悲憤のあまり、彼の黒髪はそそけ立って、おののきふるえていた。
マサキが立ち去って行った、国家人民軍作戦本部。
その建物の屋上で、将官用の赤い裏地のついた大外套を羽織った二人の男が何やら話していた。
ハイム将軍は、シュトラハヴィッツ少将のほうを振り返って、
「そうか、木原マサキを……」
「ああ……奴は腐りかけているが、腐っちゃいない。
俺たちがこの先の高みに昇るには、奴の力が必要だ」
静かに脇で聞くハイムを横目にシュトラハヴィッツは、懐中より紙巻煙草を取り出す。
「それにしても、俺は最近こう考える……。
貴様なら、もっとうまくやるとな」
ハイムは、煙草を口にくわえたシュトラハヴィッツをかえりみた。
しばらく、二人して押し黙っていたが、
「私も同じことを考えていたよ」
と、イムコのオイルライターを取り出して、シュトラハヴィッツに差し出す。
シュトラハヴィッツは相好を崩すと、両手でライターの火
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