第二十五話 選択その三
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「もうね」
「そういうことだね」
「ええ、ただ貴方は諦めているわね」
「絶望しているよ」
これが牙暁の返答だった。
「もうね」
「そうね」
「どうにもならないとね」
「あの娘が殺されて」
「他ならぬ彼にね」
「それを止められなくて」
「その時からだよ」
牙暁は悲しい顔で答えた。
「僕はね」
「ええ、けれどね」
「それでもだね」
「若しかしたら」
「あの人のこともあって」
「期待していいかしら。希望はね」
これはとだ、庚はここではこんなことを言った。
「持っていいかしら」
「それを」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「地の龍の神威は心が変わらず」
「それでだね」
「そのうえでね」
「彼女も殺されない」
「そうなることもね」
それもというのだ。
「期待していいかしら」
「桃生さんがそうなったし」
「あの時私がああ言ってもね」
??、彼にというのだ。
「殺されるとね」
「思っていたんだね」
「彼は心がなかったから」
「けれどね」
「そうはならないで」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「あの人が生きていることは」
「運命が変わった」
「そうなったとね」
その様にというのだ。
「思っていいかしら」
「そう言われると」
「思いたいわね、貴方も」
「だから僕は」
牙暁は庚に目を閉じて話した、静寂の黒い夢の世界の中で。
「あくまでね」
「人間が滅んで欲しくないわね」
「そうなるしかないと思っていても」
そして絶望していてもというのだ。
「それでもね」
「そうね、ならね」
「希望をだね」
「実はね」
ここで庚はこうも言った。
「この世の災いは最初からあったのよ」
「パンドラの箱かな」
「そう、ギリシア神話のね」
庚はその通りだと答えた。
「あのお話よ」
「そうなんだね」
「あのお話では箱を開けると」
パンドラ、彼女がというのだ。
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