第一章
3.ハーゴンの神殿
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はあっても、聞かれることなどほとんどなかったのだ。
言われたとおりに深呼吸し、考える。
しかしわからない。
「すみません。わからないということしかわかりませんでしたが」
「あっそ」
「とりあえず、同志のかたのところに行きたいです」
口を隠し気味に包んでいる大きなマフラーから、白い息が漏れた。
呆れてため息が出たようだ。
「もうロンダルキアではキミ以外みんな死んだんじゃないの」
「ひょっとしたら人間の同志はそうかもしれません。しかし他種族の皆さんならば神殿の外にもいらっしゃいました。ひとまずは近くにデーモン族の住む山がありますので、そちらに行ってみます。攻めてきたのは三人だけですし、全員殺されたということはないはずですが」
「やめておいたほうがいいと思うけど。嫌な予感がする」
少女は続けた。
「というかさ。他種族って、モンスターのことでしょ? 会いに行ってどうするの」
「聞いてみたいのです。私たちはこんな仕打ちをされるに値する教団だったのかと」
「だから、値する集団なんだってば」
「すみません。あなたを信用しないわけではありませんが」
「祠を出るときと同じこと言ってるね」
まあ、そういうことなら無理にとめないよ――。
少女はマフラーを少し直した。
「じゃあ、さよなら」
「あ、待ってください」
くるっと背中を向け歩き出そうとした少女を、慌ててフォルは呼び止めた。
「いろいろと、ありがとうございました。でも、なぜあなたまでここに来てくださったのです?」
「理由? なんとなく」
「なんとなくで、小さな女の子が、一人で、ここまで……。倒れていた私を助けてくださったときも、一人で来ていたのですよね? あなたはいったい何者なのですか」
「キミと違って、騙されにくい人間」
少女はふたたび背を向けて歩き出し、フォルはその小さな背中を見送った。
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