暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第160話:夏の日差しの下で
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「セレナには黙っておいてあげるわ」

 フォローするつもりが逆にフォローされてしまった事に、ガルドが頭をかいていると切歌はめげずに今自分達に出来る事に全力を尽くそうと意気込みを新たにした。

「今は、住民が残っているかを全力で見回るのデスッ!」
「でも、力み過ぎて空回りしてるわよ?」
「……正直、何かやってないと、焦ってワチャワチャするデスよ……」
「うん……」

 気持ちの上ではやる気があっても、それを為す為の力が無い。厳密にはあるのだが、下手に力を振るえないと言うもどかしさが彼女達を苛んでいた。それはある意味でガルドには理解しきれない感情。容赦なく自由に力を振るえる彼では、何を言っても空しい慰めにしかならないだろう。
 故に今回はガルドも何も言えず、切歌と調を見るしか出来なかった。

 雰囲気が沈んできたのを感じ取ったのだろう。切歌は気分を入れ替えるべく自分の頬を叩いて気合を入れ直した。

「にゃッ、にゃッ! よしッ! 任務再開するデースッ!」

 意気揚々と振り返りながら駆けだそうとした切歌だったが、その直後実ったトマト畑の影から老婆が1人出てきた。顔はマリア達の方を向いている切歌はその事に気付かない。

「あッ!?」
「切ちゃん、後ろ……」
「危ないッ!?」

 マリア・調・ガルドが慌てて引き留めようとするが間に合わず、切歌はこの畑の持ち主だろう農家の老婆とぶつかってしまった。
 2人がぶつかりお互い転び、その拍子に老婆が背負っていた籠からトマトが転がり落ちる。

「わあッ!?」
「大丈夫ですか?」

 転んだ2人の内、特に老婆の方を心配しながらマリアが声を掛ける。幸いな事にそこまで激しくぶつかった訳では無く、切歌は勿論老婆の方も特に大きな怪我は無さそうだった。
 それでも自分の不注意でぶつかってしまった事は事実なので、切歌は慌てて老婆に頭を下げた。

「ごめんなさいデスッ!」
「いやいや、こっちこそすまないねぇ」
「怪我は? どこか痛いところがあったりしませんか?」
「大丈夫ですよ、ありがとう」

 ガルドに手を借りながら老婆が立ち上がる。切歌と調が落ちたトマトを拾い上げる中、マリアは老婆に退去指示が出ている事を告げた。

「政府からの退去指示が出ています。急いでここを離れてください」
「はいはい。そうじゃね。けどトマトが最後の収穫の時期を迎えていてねぇ」

 切歌達から落ちていたトマトを受け取る老婆の言葉に、料理人としてガルドの目がトマトに釘付けになった。色鮮やかに赤く、丸々と実ったトマト。見ただけで良いものだと分かるそれが、ガルドの料理人魂に火を付けた。

「ふむ……これは確かに良いトマトだ」
「分かるかい、お若いの?」
「これでも料理人の端くれ、いい食
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