暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第160話:夏の日差しの下で
[4/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
のをガラス越しに見ていた。白衣を着た人々が何処か古めかしさを残した機械を操作するのを眺めつつ、弦十郎が指示を出す。

「難度の高い複雑な暗号だ。その解析には、それなりの時間を要するだろう……翼ッ!」
「ブリーフィング後、雪音、立花を伴って周辺地区に待機。警戒任務に当たります」
「うむ」

 翼の言葉に弦十郎が頷く。それに対し手を上げたのが調だった。

「あの……私達は何をすれば……」

 警戒任務に参加しようにも、現状LiNKERが奏用の物しかない以上無理はさせられない。本当の緊急事態であれば止むを得ないが、そうでない場合無暗矢鱈に戦いに駆り出す事は出来なかった。

 そんな彼女達に与えられたのは、残っている住民の避難誘導であった。退去命令に従わなかったり、単純に気付いていなかったりした住民が居ないかを探し、もし見つけた場合は避難させるのが彼女達に与えられた仕事だった。

 もし戦闘に巻き込まれた場合に備えて、ガルドをお供にマリア達は周辺地域に逃げ遅れた人が居ないかを双眼鏡を手に探していた。

「9時方向異常なし」

 調が双眼鏡を覗きながら報告する。彼女達の前に広がるのはのどかな田舎の景色。山や林を背景に、作物を実らせた畑が見える。

 切歌も調べに合わせて双眼鏡を覗きながら遠くを眺めていると、トマト畑の傍に人影らしきものを見つけ声を上げた。

「12時方向も異常……あああああッ! あそこに居るデスッ! 252ッ! れっつらごーデスッ!」
「いやあれって……」
「真似してみたいのは分かるけど、切ちゃん、それは――」

 切歌が指さした先にあるのは人ではなく案山子だった。確かに遠目に見れば人に見えなくもないが、それでもあれが案山子である事は一目瞭然。そんな案山子に切歌は駆け寄り、回り込んで話し掛けた。

「早くここから離れて……って、怖ッ! 人じゃないデスよッ!?」
「最近の案山子はよく出来てるから……」

 一応調はフォローしてやるが、それでもやはり案山子を人と見間違えるのは無理があると心の何処かでは思っているのだろう。仕方がないと言う様子を見せながら切歌に歩き寄っていく。

 その2人の姿を見ながらマリアはぼんやりと呟いた。

「LiNKERの補助がない私達に出来る仕事は、このくらい……」
「そう腐るな。今リョウコが頑張って新しいLiNKERの調整を行ってくれている。それが出来るまでの辛抱だ。日本の諺にも『金は寝て待て』とある。今は落ち着いて待とう」

 気分が落ち込んだ様子のマリアをフォローしようと諺を口にしたガルドであったが、それが間違いであると気付いたマリアは苦笑しながら訂正してやった。

「それを言うなら『果報は寝て待て』よ。別の諺と混じってるわ」
「……本当?」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ