第一章
2.ロンダルキアの祠
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フォルが目をあけると、そこはベッドの上だった。
上半身だけを起こし、そのまま部屋の中を見回した。
石造りの建物のようだ。そこまで広くはなかった。
「やっと、起きた」
誰もいないと思った瞬間に、やや高いが抑揚のない声がした。死角にいたようだ。
ベッド横にやってきたのは、小さな女の子だった。
肩に届かない程度の銀色の髪に、どこか冷めた印象の碧眼。顔の下部から首にかけては、白いマフラーを巻いていた。
「あの、あなたが助けてくださったのでしょうか」
「うん。倒れて雪に埋もれかけていたのを見つけたから。犬ぞりに載せてここまで運んだ。死んでなくてよかったね」
やはり抑揚のない、平坦な話し方。口元がマフラーで隠れ気味であることもあり、表情も乏しく見えた。
頭はまだ混乱気味だったが、フォルは状況をなんとなく理解した。大神殿から放り出されて落ちたときに失神してしまい、その後この少女に拾われたようだ。
フォルはベッドから出ると、頭を深く下げた。
「ありがとうございました。何もお礼ができなくて申し訳ありませんが、私は急いで戻らないといけない場所があります。すみませんがここがロンダルキアのどのあたりなのか教えてください」
「戻らないといけない場所がキミらの神殿のことなら、ないよ」
「え。ない?」
「どーん、ってなって、崩れた」
手振りで崩壊を表現する少女。
「く、崩れ……た……?」
この世のほぼすべての呪文を使うことができた大神官ハーゴン。大神殿は彼の超人的な魔力を活かして建てられたのだと、フォルは上司である悪魔神官ハゼリオから教えられていた。
それが崩れた?
本当なら、ハーゴンは敗れたということになる。そしてハーゴンが敗れたということは、上司の悪魔神官ハゼリオも――。
フォルの背中に悪寒が走る。
「邪教の大神官も、呼び出された破壊神も討たれた。世界は平和になったってさ」
「……!」
この白い少女も、教団を邪教と呼ぶ。
しかしロトの子孫たちに言われたときのように困惑はしなかった。
呼び出された破壊神も討たれた、という言葉の衝撃が強すぎたためだった。
「私は教団の一員です」
「うん。知ってる」
机の上を、少女は目で示す。
それまで気づかなかったが、壁際にある小さな机の端に、濃緑色のローブと白い仮面がきれいに畳んで置かれていた。
これまた初めて気づいたが、フォルは上下とも下着姿であった。
「世界を破滅させようとしていた、邪な軍団」
「……邪なものではないはずです」
「それはたぶん、キミが知らないだけ。それか、勘違いしてるだけ」
そう返されたが、フォルはもちろん納得したわけではない。
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