第1幕:帰って来てしまったエース
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「手引きしたのは彼です。今モビルフォースに乗っている女性は、彼が呼んだ窃盗団から展示品を護ろうと」
その途端、兵士達は青年の方を視る。
「その話、本当かね?」
予想外の展開に、反論や言い訳が捻り出せない青年。
「な!?」
兵士達は青年を連れて往こうとする。
「事情を聴きたい。御同行願えるか?」
青年はここでようやく犯人扱いした館長に文句を垂れた。
「そこまでかよ親父!?そこまでして展示する予定の兵器から出番を奪いたいのかよ!どう―――」
その途端、館長の平手打ちがとんだ。
「あ!?」
「馬鹿もん!ここに飾られている内はそこら辺の絵画や骨董と変わらんが、1度野に放てば、どれだけの数の人命を奪うか、本気で考えた事はあるのか!?」
最初は停めに入ろうとした兵士達だったが、館長の怒気に怯んで立ち止まってしまう。
「始まってから反省してももう遅い!正にあの子の言う通りだったな!?自分が犯した罪の重さ、牢屋でたっぷり思い知るんだな!この馬鹿息子が!」
その間、少女は何も言わずにフェルシュングの運転席に座るのみであった。
全てが終わって兵士達に連行される青年。
そんな青年の背中を寂しそうに観る館長。
「本当に……これで良かったんですか?」
少女の質問に対し、館長は犯した罪を視て蒼褪めているかの様であった。
「……ダメですね。実の息子にすら反戦や厭戦の大切さを伝えきれないんじゃ―――」
悪そうな顔をしながら少女は言葉を紡ぐ。
「私は確かに始まってからじゃ遅いと言いました。でも、だからと言って何も知らぬまま動くのも悪い事。やはりこの戦争博物館は必要不可欠ですよ」
「しかし―――」
少女は右人差し指で館長の口を抑えた。
「貴方は学んだ。ああ言う危険人物が1人でも残っている限り戦争は終わらない事を。なら、この博物館がそんな危険人物の心を正す場所に成れば良いんだよ。それが良い」
館長は、改めて少女の名を口にした。
「ツルギ・マインドルさん……で、宜しかったんですよね?」
少女は照れ臭そうに言う。
「名乗る心算はありませんでした。ただ火星を護りたかっただけで、殺した人間を踏み台にしながら出世する心算は……やめましょう。この先は、どう言おうが根も葉もない言い訳にしか聞こえませんし」
その途端、館長は叫んだ。
「今日の騒ぎから逃げる気か貴様!?」
「……へ?」
「元はと言えば、アニアーラ管理委員会が火星で半年も大規模な内乱に没頭したのが原因でしょうが!そのせいで、暴走族や暴力団によるスペースデブリ密漁はその数を増し、それに比例してモビルフォースを運転出来るヤンキーも増えてしまった!それなのに!それなのに……貴女は愛機から逃げてホームレスのフリをしながら罪から逃げている!」
「え!?この私が、罪から逃げた
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