第1幕:帰って来てしまったエース
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アニアーラ1994……の片隅。
そこには多くの物を失いホームレスへと堕ちた者達が棲み付いていた。
ある者は就活や就業で躓き、
ある者は親族か周辺の理不尽によって進路と貯金を失い、
ある者は犯した大罪によって信頼と居場所を失い、
ある者はあらゆるしがらみから逃げた。
そう言った者達は住む家を持たず、日雇い仕事や拾ったゴミを売ったりして生活費を稼ぐ日々が待っていた。
「けっ。あの工場、湿気てるぜ」
「あんなに働いてこれだけかよ?」
責任転換して駄々を捏ねるホームレス達を横目に、本来なら学校に通うべき年齢に見える女性ホームレスが呑気に笑った。
「私も人の事は言えないけど、高収入の仕事に恵まれてる人が、こーんな場所で寒がってる訳がないでしょ?」
それを聞いたホームレスの1人が激怒し、その少女の胸倉を掴んだ。
「言ってくれるじゃねぇか姉ちゃん!」
だが、少女も芯が強いのかまったく動じない。
「はっ。そこまで言うんだったら、もっとましな職場に就職しなよ。私も人の事は言えないけど」
少女に押し返されたホームレスが尻餅を搗きながら悔しそうに歯噛みする。
「人の気も知らないでぇー……」
しかし、少女に言い負かされたホームレスに反論の術は残っていなかった。
なぜなら、彼はネット動画の投稿に没頭していた学生だった。だが、膨大な閲覧数欲しさに店舗を1つ潰しかねない迷惑動画を投稿してしまい、それに激怒したネット利用者達の悪辣な批判によって家族離散へと追いやられたのである。
無論、これだけの信頼喪失を犯した罪人を温かく迎え入れる企業は少なく、結局、就職活動は未完に終わってホームレスの溜まり場に流れ着いたのである。
でも、元迷惑動画投稿者は自分の事を棚に上げながら少女を問い詰めた。
「そう言うお前はどうなんだよ」
対する少女はあっけらかんと答える。
「人間の死体、視た事ある?」
その途端、元迷惑動画投稿者はドン引きしてゆっくりと後退した。
「へっ……ネットでは強いがリアルには弱いか?ちゃんと運動してる?」
一部始終を観ていた別のホームレスが命令する。
「馬鹿な事をやってないで、この仕事が出来る奴を探してこい」
「どんな仕事だよ」
元迷惑動画投稿者は、仕事と聞いて内容を確認する。だが、
「モビルフォースを運転出来る方急募ぉー!?モビルフォースの意味を解ってるのかよ!」
その時、元迷惑動画投稿者と喧嘩していた少女が手を上げた。
「ソレ……私だ」
一同は固まった。
「……へ?」
アニアーラ1970
ホームレス少女がモビルフォース運転手急募のバイトに向かうと、そこには戦争博物館開展を望む男性がいた。が、少女の幼い外見に気圧されていた。
「君……若いね?……何歳?」
が、少女は質問には答えない。
「そ
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