第百五話 何の為に学ぶかその九
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「人間努力が大事ね」
「そうだ、本当にな」
「努力してそこで苦労して」
「色々経験してな」
そしてというのだ。
「自分は磨かれていくんだ」
「それでよくなっていくのね」
「えらくなるとかもな」
それもというのだ。
「努力してだ」
「なるものね」
「その人はもう勝手にな」
「自分をこの世で一番偉いと思っていたけれど」
「一体何が偉いんだ」
それこそというのだ。
「皆そう言うに決まってる」
「その人以外のね」
「何も出来ない何もしない何も持っていないでな」
「奥さんに逃げられてで」
「周りに誰もいなくてな」
それでというのだ。
「一体な」
「何をどう偉いか」
「わからないだろ」
「全くね」
「けれどな」
それでもとだ、父は語った。自分自身もどういったものかという顔になってそのうえで娘に話すのだった。
「その人だけはな」
「思っていたのね」
「それもずっとな」
「人のお話も」
「ああ、聞かなかった」
「やっぱり」
「勝手にな」
それこそというのだ。
「そうなって天狗にもな」
「なっていたから」
「それでな」
その為にというのだ。
「もうな」
「人の話も聞かなかったの」
「誰が忠告してもな」
「親御さんは?」
「甘やかすだけだった」
彼等はというのだ。
「ただな」
「どうしようもなかったのね」
「五十過ぎになってもな」
その人がというのだ。
「親御さん、母親の人がな」
「甘やかし続けたのね」
「五十過ぎになったのにな」
「五十過ぎでも自分の子供ってことね」
「もうべたべたとだったらしいな」
「五十過ぎのおじさんをべたべたって」
咲は眉を顰めさせて言った。
「かなりね」
「気持ち悪いな」
「そんな親御さんだとまともに躾とかもな」
「しなくて」
「子供の中でその人だけ甘やかしてだ」
そしてというのだ。
「悪いところをな」
「悪いって言わなかったのね」
「それでその人にお金をやったりもな」
「してたの」
「そうして余計にな」
「悪くなったのね」
「ああ、努力を一切してこなくて」
生きている間にというのだ。
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