第六幕その三
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「何か蛇みたいね」
「曲がりくねっていてじゃな」
「ええ、そう思ったわ」
「何でもこの坂は口縄坂というらしいぞ」
「そうなの」
「うむ、丁度そこにおる人に聞いた」
見れば前からです。
着流しの濃い緑色の着物に草履を身に着けその上にマントとボルサリーノの帽子という格好の面長の男の人が来ました、リンキティンク王は王女にその人を見つつお話しました。
「実はな」
「あの人からなの」
「そうじゃ、ちょっとよいか」
リンキティンク王はその人にお声をかけました。
「この坂は口縄坂じゃな」
「通称やけどな」
その人は笑顔で答えました、見れば面長で小さな目でお顔は笑っています。
「そうなってるで」
「そうじゃな」
「ああ、それで王様何処行くんや」
「晴明神社に行くのじゃ」
リンキィンク王はその人に笑って答えました。
「皆に安倍晴明さんを紹介しにのう」
「ああ、見たら有名人ばかりやな」
「お主も知っておるか」
「皆な、名前とお顔は知ってるで」
「それは何よりじゃ」
「それで私も名乗ってええやろか」
その人から言ってきました。
「そうしても」
「うむ、是非共な」
「ほなな、私は織田作之助っていうんや」
皆に笑顔で名乗りました。
「外の世界でもこっちの世界でも作家やってるで」
「あっ、あのカレーの人ですね」
「ご飯とルーを最初から混ぜてある」
「あのカレーの人ですね」
「そしてご飯の中に鰻があるあの鰻丼の」
「あの人ですね」
「ああ、それで善哉はや」
織田さんはナターシャ達五人に笑って応えました。
「何といってもや」
「はい、あの善哉ですね」
「二つ出て来る」
「あの善哉ですよね」
「それですね」
「何といっても」
「そや、こっちの世界でも書いてるけどな」
小説をというのです。
「美味いもんもや」
「楽しまれてますか」
「オズの国でも」
「それでこの街におられるんですね」
「そうされてるんですね」
「今も」
「そや、ほんまええわ」
五人にこうも言いました。
「ずっといたいわ」
「ずっといられますよ」
王子が織田さんに答えました。
「何時でもオズの国の他のところにも行けますが」
「この街におることもやな」
「出来ますよ」
織田さんにこのこともお話します。
「織田さんがそうされたいなら」
「そやねんな、ただ私は織田さんって言われるのはな」
「抵抗がありますか」
「ああ、織田作って呼んでくれるか」
その様にというのです。
「そうしてくれるか」
「織田作さんですか」
「外の世界でもそう呼ばれてたし」
織田作さんと、というのです。
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