第二部 1978年
歪んだ冷戦構造
その名はトーネード その2
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「馬鹿か」
マサキは呟いた。
誇張したあきれ顔をその下に作って。
「俺は光線級にミサイルの飽和攻撃が有効だと考えている」
マサキの設計した、八卦ロボの思想と戦術機の思想は根本から違った。
彼は、遠距離からの強力な火力投射こそ正義であり、それこそがパイロットの安全性を守るものと信じてやまなかった。
故に、彼に設計し、建造した山のバーストン、月のローズ・セラヴィー、雷のオムザック。
敵の接近を許さず、ごく初期の山のバーストン以降は、自在に飛行できる能力を付与した。
また相手の視界に入ることなく、一方的に撃破できるのを目的としていた。
バーストンには、500発の誘導弾に18発の核ミサイル。
ローズ・セラヴィーには、指向性のビームに、エネルギー砲のジェイ・カイザー。
オムザックには、周囲数キロメートルの物質を微粒子化する原子核破砕砲『プロトン・サンダー』。
そして、宇宙のエネルギーを無尽蔵に集める次元連結システムの天のゼオライマー。
両腕から繰り出す『メイオウ攻撃』は、原子そのものまで消滅させる威力であった。
「TU95爆撃機からの核搭載のKh-20ミサイルの飽和攻撃をもってして、BETA梯団の進行を止めた。
その様な事例があると、ベルンハルトより聞いている。
そして、東ドイツ軍の戦闘報告でも一部光線級の防御に損害を与えた、ともある。
そういう意味では、戦術機に誘導ミサイルの搭載は有効と考える」
「肩に緑色の箱を積んでいるのは何だ」
「あれは、英国が作ったミサイル発射装置ですよ」
彼はわざと非情を顔に作って、言った。
「あの程度じゃ、せいぜい戦車級に牽制を与えるぐらいだぞ。
時間稼ぎにしかならん……」
どうして、この世界の人間は人命を軽んじる傾向が強いのだろうか。
あの悪名高い、前の世界の帝国陸海軍でさえ、有効打でなければ特攻作戦を中止したのに……
なにかと、自爆攻撃を好む傾向にあるのではないか。
そんな風に思い悩んでいた。
「ドクトル木原……」
次の言葉でマサキは我に返る。
「だいぶ、難しい顔をされていますな」
声をかけてきたのは、上品なウールフランネルの灰色の背広に身を包んだ老人であった。
「フフフ。俺には、どれも同じブリキの人形にしか見えぬからな。
ファントムの粗悪品であるMIG21でさえ、露助と東独の機体でも、色の違いはあったぞ」
老紳士は、マサキの佇まいを一通り見た後、顔をほころばせる。
「自己紹介が遅れましたな。
フィアット自動車で自動車設計技師をしておりました、ジアコーザと申すものです。
博士、どうかお見知りおきを」
フィアット自動車と聞いて、マサキは眉を動かす。
日本でも人気がある、イタリアの大衆車メーカーの名
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