第一章
1.邪教、滅びる
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ロンダルキアと呼ばれる、万年雪に覆われた白銀の地。
天に向かって塔状にそびえ立つ、石造りの大神殿が存在した。
世界にとっては、大神官ハーゴン率いる邪教の本拠地。
しかし、お茶くみ係として働いていた十四歳の少年・フォルにとっては、居心地のよい仕事場であると同時に、心休まる家でもあった。
そして、そこが今、戦場となっていた――。
神殿入り口の番・デビルロードの断末魔が響き渡ったことから始まった。
すぐに、フォルが控えていた三階の執務室にも報告があがってきた。勇者ロトの子孫であるローレシアの王子、サマルトリアの王子、ムーンブルクの王女の三人組が、この大神殿に乗り込み、同志を斬り捨てながら進んできている、と。
もう何年もロンダルキアの地を離れたことがないフォルも、その三人組の存在は前から知っていた。
下界への布教のために各方面に派遣されていた何人もの支部長をはじめ、多くの同志が彼らの手にかかって死亡していると聞いていたからだ。
単なる乱暴者たちではないか。フォルはそう思っていた。
信じるものが違うという理由で、人や魔人、魔獣を殺戮する野蛮な行為に及ぶ。善き心を持っている人間であればそんなことをするはずがない、と。
すぐ下の二階には、アークデーモンの族長や、デビルロードの族長、大神官ハーゴンが手懐けていたドラゴン、そしてフォルの上司である悪魔神官ハゼリオが発掘したという金属体の魔獣・キラーマシンといった、普通の人間では束になっても勝てないと思われる猛者たちがいたはずだった。
しかし無情にも、悲鳴は断続的に続いた。
すでに窓からだけではなく、廊下からも聞こえてくるようになってきていた。
二階の彼らをもってしても、どうやら侵入してきた三人組をとめることはできないようだ。
執務机に座っていたハゼリオが、フォルの淹れた茶を丁寧に飲み干した。
この三階に残っているのは二人だけだった。他はハゼリオの指示により、一階や二階の同志を助けに向かっていた。
「このような日が来ることになろうとは」
ハゼリオは静かにそう言うと、頭巾に灰色の髪をしまい込み、机の上に置かれていた白い仮面を顔に着けた。そして立ち上がり、壁にかけてあった杖を手に取る。赤と青の宝玉が埋め込まれ、先端に翼を広げたドラゴンの像がついた、愛用の杖であった。
「儂が侵入者を食いとめる。上の階へ登らせはせぬ」
彼のみに着用を許されている臙脂色のマントを揺らし、部屋を出ていく。
「あっ、私もお供します」
白いローブと魔術師用の濃緑色のマントを着て執務室の隅に立っていたフォルも、慌てて仮面を着けて後に続いた。
四階にあがる階段へとのびている廊下。
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