第一章
1.邪教、滅びる
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ついに現れたロトの子孫たちの姿は、フォルにとってやや意外に映った。
いずれも十代後半と思われるその若さにではない。輝く鎧や剣、杖にでもない。
その精悍な表情と理知的な眼光に、だった。
単なる荒くれ者のそれではないように見えたことに、違和感を覚えた。
三人のうち、中央で前に出ていた、紋章の入った立派な剣を持つ男。それがローレシアの王子であることはすぐにわかった。
「俺たちは破壊神を呼び出し世界を破滅させようとしている邪教の首領、ハーゴンを討伐するためにきた。投降してそこを通してほしい」
彼から力強い声で放たれた言葉に、フォルは混乱した。
邪神などを信奉した覚えはなく、邪教に入信した覚えもなかったからだった。
たしかに、大神官ハーゴンは破壊神の召喚を目指していた。しかし破壊は創造の一段階に過ぎず、破滅とはまったく性質の異なるものと聞いていた。
「私は大神官ハーゴン様の部下であり右腕、悪魔神官ハゼリオだ。ハーゴン様には指一本触れさせはせぬ」
ややしわがれた声とともに、フォルの上司が体の前で杖を構える。
冷たい風が、外から吹いてきた。
ここはフォルから見て右側の壁に、窓が並んでいる。最下部が床面に接するほど大きな窓だった。晴天ゆえにロンダルキアの絶景が見えているが、もちろん今のフォルには目をやる心の余裕などはない。
「ならば仕方ない。実力で通らせてもらう」
ローレシアの王子が、剣をその場で一振りし、構えた。
一瞬遅れて、いま窓から吹いてきたものとは比にならないほどの風圧が、まだ十分に離れているはずの二人を襲った。
フォルはひっくり返りそうになったが、慌てて踏ん張り前傾姿勢を作った。
風がやむと、フォルは上司を見た。構えている杖の赤と青の宝玉が、それぞれ光っていた。
戦いには疎いフォルだったが、それでもすぐに理解できた。ハゼリオが瞬時に魔力で緩和してくれていなければ、自分は剣圧だけで吹き飛ばされていたであろうことを。
敵は自分が戦えるような相手ではない。そう悟ったフォルだったが、恐怖心を必死に抑え、腕を前方に伸ばした。
ほんの少しでも、この上司の助けになるのであれば――。
ロトの子孫たちが踏み込んできた瞬間に、最近覚えたばかりのギラの呪文をぶつけるつもりだった。
しかしその腕が、横から伸びてきたハゼリオの手で掴まれた。
「うわっ!?」
引き寄せられた。強い力だった。
「お前は生きろ」
その声とともに、フォルは横の窓から外に向かって勢いよく放り投げられた。
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