第一章
[2]次話
すまぬ
土佐藩の藩主だった山内容堂は志士達から非常に評判が悪かった、これは彼が幕府に忠義を尽くしているからだけではなかった。
「上士の者達ばかり可愛がるという」
「郷士達は露骨に見下す」
「土佐の志士達を多く殺した」
「全く以て嫌な殿様だ」
「どうにかなって欲しいものだ」
「全くだ」
こう言う志士達が多かった、それは志士達の総本山の一つと言っていい長州藩でも同じであり彼等は容堂についてだ。
兎角悪く言っていた、それは高杉晋作も同じであり。
「あの人は好きになれない」
「そうですよね」
「頭が古いのも駄目ですが」
「郷士達を何と思っているのか」
「志士達を多く殺してです」
「優れた人物もそうしています」
「特に武市君だ」
彼を切腹させたことをだ、高杉は批判した。
「坂本君も言っていたが」
「坂本龍馬君ですね」
「あの藩を脱藩した」
「彼も山内公は嫌いですね」
「身分なぞ関係あるか」
高杉は言い切った。
「最早な」
「はい、優れているかどうか」
「大事なのはそれです」
「松陰先生がそうしたお考えでしたし」
「それならです」
「上士だ郷士だの言い時代遅れの幕府に忠義を尽くし」
そしてというのだ。
「多くの志士、僕達の同胞を殺すなぞな」
「言語道断です」
「我等が殿と全く違います」
「島津公と同じ御仁ですな」
島津久光、現薩摩藩主の父でありこの藩の実質的な主である彼と、というのだ。
「全く以て」
「そうかもな」
「あの御仁出来れば討ちたいですが」
「流石にそれは無理です」
「土佐藩の前の主の方ともなると」
「見の周りも大層なものですし」
「どちらにしても好きになれない」
高杉は忌々し気に言い切った。
「あの御仁は」
「左様ですな」
「志士達の敵です」
「特に武市君達を殺した」
「我等の敵です」
長州藩の志士達もこう言い合って彼を忌み嫌っていた、それでだった。
彼等の領袖の一人である桂小五郎は思うところがあり高杉に言った。
「僕が容堂公と話してみようか」
「それでどんな御仁か確かめますか」
「確かに幕府にこだわり多くの志士達を殺した」
このことは彼も苦い顔で述べた。
「だが藩政自体はよかったからな」
「名君とは言われていましたね」
高杉もこのことは否定しなかった。
「そうでしたね」
「だからな」
「一度あの方とですか」
「直接お話をしてな」
「どうした御仁か見極めますか」
「僕もあの人は嫌いだ」
かく言う桂もというのだ。
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