第一章
[2]次話
ウルクの樹
メソポタミアに伝わる話である。
南風が洪水を起こしチグリス=ユーフラテス川の岸辺にあった樫の木を全て流してしまった。それを見てだった。
愛と豊穣の女神イナンナは怒って南風の神に言った。
「貴方やり過ぎよ」
「ううむ、そうか」
「ええ、幾ら何でもね」
やや面長で切れ長の流麗な目と細く長い眉に艶やかな赤い唇と黒く長い腰まである神の毛に長身に大きな形のいい胸と尻を持つ女神はその肢体の形がはっきりと出ている服を着ている。だが今は艶やかさよりも怒りを見せて若い男の神に言っていた。
「これからは気を付けなさい」
「風を吹かせるにもだな」
「加減をしてね、そしてね」
「そして?」
「倒れた木は人間達に椅子やベッドに使わせるけれど」
イナンナはさらに言った。
「私も使うわ」
「そうするか」
「ええ、大事にするわ」
こう言ってだった。
イナンナは倒れた樫の木を人間達に使わせ自分もそうする為に樫の木を自分の神殿にあるウルクに持ち帰った、そのうえでだった。
自分も椅子やベッドに用いたがそれと共にだった。
「植えられるのですか」
「樫の木を」
「そうされるのですか」
「ええ、いい木だからね」
従神達に木を植えてから答えた。
「これからはそうするわ」
「そうですか、ではですね」
「これからこの木を育てますね」
「そうされますね」
「そうするわ」
こう言って木を育てだした、やがてこの樫の木は見事な巨木となったが。
木には色々な生きものが棲む、それでこの巨木にもだった。
「参ったわね」
「はい、大きく育ったのはいいのですが」
「根には蛇が棲み」
「中には嵐の精霊が棲み」
「枝にはです」
「ズーね」
見れば雄獅子の頭をした鳥が枝、梢のところに巣を作っている。
「あの鳥がいるわね」
「これは厄介です」
「もうどの生きものも群れになっています」
「そして離れません」
「これではです」
「どうにもなりません」
「折角近くに行ってみたいのに」
イナンナは難しい顔で述べた。
「これではね」
「難しいですね」
「世話をすることすらです」
「イナンナ様でも」
「ええ、私でも一戦交えないとね」
木に棲み付いた彼等と、というのだ。
「無理よ」
「左様ですね」
「困ったことです」
「これはまた」
「どうしたものかしらね」
イナンナは実際に困っていた、だがその話を聞いた南風の神は話をウルクの王ギルガメス王にして無双の英雄である彼にこのことを話した。
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