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蕾の少女
第三章

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「そうでしょ」
「ああ」
 夫は妻に否定せずに答えた。
「実はな」
「やっぱりそうね」
「だってな」 
 そう考えるのはどうしてかとだ、夫は妻に答えた。
「小学五年生、十一歳だからな」
「そう言うけれどね」
「第二次成長期か」
「それで昔だったらね」
 妻はさらに話した。
「結婚だってね」
「していたか」
「前田利家さんの奥さんだってね」
 ここで言うのは正室のことである、おまつと言い歴史でもよく知られている女性であり夫をよく支えた良妻であった。
「十二歳でよ」
「結婚していたか」
「今ではまだ小学生だったけれど」
 そうした年齢だったがというのだ。
「結婚してお子さんもよ」
「出来たか」
「知らなかった?このこと」
「ああ、前田利家さんは傾奇者で槍と算盤が上手だってな」
 こうしたことをというのだ。
「そうしたことは知っていてもな」
「奥さんとのことはなのね」
「あまりな、そうだったんだな」
「そうよ、だからね」
「青空もか」
「そうよ、もうね」
 夫に笑顔で話した。
「今みたいな頃から」
「お洒落とかしていくんだな」
「そうしていくのよ」
「そうなんだな」
「そうよ、それとね」
「それと?」
「問題は誰を好きになったのかね」
「変な男だったらな」 
 妻の今の言葉にだ、夫は心配する顔になって応えた。
「まずいな」
「ええ、ヤクザ屋さんとかね」
「暴力を振るったりな」
「人を騙しても平気な人なんてね」
 それこそというのだ。
「もうね」
「絶対に好きになったらいけないな」
「悪い人を好きになると」
「本当にな」
「大変よ」
「好きになった人がヤクザ屋さんだとかな」
 修は翠に有名な某仁侠映画の台詞を思い出しつつ述べた、そうした職業にいる者を好きになった女の台詞だ。
「恰好良い言葉でもな」
「現実にはね」
「論外だ」
「そうよ、悪い人を好きになっても」
 それでもというのだ。
「いいことなんてね」
「全くないからな」
「だからね」
「どんな人を好きになったか」
「それがね」
 何といってもというのだ。
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