第二章
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家康は共に上座にいる氏政父である氏康に似て高い鼻と細面で鋭利な整った顔立ちの彼に対して話した。
「一つ宜しいでしょうか」
「何でありますかな」
「はい、実はです」
氏政に気さくでありつつ礼儀を弁えた態度で申し出た。
「一つ剽軽な出しものがありますが」
「剽軽といいますと」
そう聞いてだ、氏政は盃を手にしたまま応えた。
「三河漫才ですか」
「我が領国の芸ですな」
「あれですかな」
「ははは、あれはまたの機会でして」
それでというのだ。
「ここでは別のものをです」
「剽軽な催しをですか」
「考えておりまして」
「ではそれを」
「出して宜しいでしょうか」
「徳川殿がそう言われるなら」
特に反対せずにだ、氏政は応えた。
「その様に」
「それでは」
家康は氏政が頷いたのを見て自身も頷いた、そしてだった。
徳川家の家臣達の筆頭の座にいる酒井にだ、微笑んで声をかけた。
「北条殿にお見せせよ」
「畏まりました」
酒井も笑顔で応えた。
「ではこれより」
「存分にな」
「見てもらいまする」
酒井はすぐにだ、手拭いを出して。
それを百姓の様に被る、すると。
徳川家の家臣達がだ、一斉に笑って言った。
「おお、ここで見られるとは」
「酒井殿の芸が」
「これはよきこと」
「では見せてもらいますぞ」
徳川家の家臣はまさにとだ、目を輝かせて立ち上がり宴の場の真ん中に出た忠次を囃した、氏政をはじめとした北条家の者達は何が起こるかと思ったが。
何とだ、歌い踊りながらだった。
何かをすくう、百姓が川か海で何かをそうする風な踊りで何と海老をすくう歌を歌っていた、その歌と踊りを聴いて見てだった。
徳川家の者達は笑って喝采を送る、そして。
北条家の者達は最初これは何かと思ったが。
忠次の剽軽な歌に踊りにだ、自然と笑いはじめた、そうしてこれはいいと酒井を囃しだした。その様子を見てだった。
家康は氏政にだ、自分も笑いつつ尋ねた。
「如何でしょうか」
「酒井殿ですか」
「はい、当家で最も頼れる者の一人です」
こう言うのだった。
「それがしも政に戦にとです」
「助けられていて」
「こうした時もです」
「この歌と踊りで、ですか」
「海老すくいといいますが」
この歌と踊りはというのだ。
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