アインクラッド 前編
揺れ出した心
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サキはどうするつもりなんだ?」
「レベリングと装備の強化を続ける。で、第一層のボス攻略部隊が編成されたら、そこに参加する」
「でも、もしその部隊が編成されなかったらどうするんだ? プレイヤー全員が《はじまりの街》から出ないかも知れないじゃないか」
「いや、それはないだろう。圏内コードに対する不安、生活費の不安に駆られたプレイヤーは、遅かれ早かれフィールドに出てくる。……まぁ、そいつらは危険なボス攻略なんて絶対にご免だろうから、残るは後一つだがな」
「……その、後一つって言うのは?」
トウマが恐る恐る先を促す。
「元βテスター、あるいは、他のMMORPGで腕に覚えがある連中さ。ネットゲーマとしてのレベルアップへの執着や、他のプレイヤーたちよりも上にいるという優越感を味わいたい奴らが、きっといるはずだ」
“βテスター”という単語が出た時、トウマの表情が一瞬強張った。そして、少しの間何かに迷うような素振りを見せた後、今までよりも数段小さな声で言った。
「……そのβテスターなんだけどさ。……マサキはどう思ってる?」
「どうって、特に何も」
その答えに、トウマは驚いたような表情を浮かべ、畳み掛けるように質問を続ける。
「本当に? 何も?」
「ああ。……質問の意味がよく分からないんだが」
何故かヒートアップしていたトウマが我に返り、再び小さな声で話し始める。
「……βテスターたちは他のプレイヤー達を見捨てて情報を独占してるだろ? もし彼らが情報を提供していれば、とか、思わないのか?」
「思わないな。大体、MMORPGというジャンル自体が、限られたリソースを奪い合うことを前提にして作られたものだ。その基本法則を無視すれば、その分だけ代償を支払う必要がある。攻略も遅れるだろうし――」
マサキは一度そこで区切ると、ポーチから一冊の冊子を取り出した。アルゴから貰った攻略本で、マップデータや出現するモンスターなどの情報が記されている。先ほど、トウマが宿屋を探す際にもっていたのもこれだ。
「それに、こいつがある。無料配布ってことは、情報は既に誰でも得られるんだよ。どう考えても、この時間に配られるってことはβテスト時の情報だ。つまり、βテスターは情報を公開している。それ以上を求めようとするのは、全ての情報を独り占めしようとするのと同じくらい身勝手だと、俺は思うがな」
「そうか……」
トウマが少しだけ安堵の色を浮かべるが、再び苦しい表情になる。
「……それで、一応確認なんだけど……、これからも、俺とパーティー組んでくれる……よな?」
「構わない」
マサキはそこまでトウマを気に入っているわけではないが、彼に抱いた気まぐれの原因が知りたくなったマサキはトウマの問いを即答した。すると
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