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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
揺れ出した心
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カミが頭を地面から隔離してしまう。
 しかし、マサキがオオカミの下から抜け出すには、その時間は十分すぎた。マサキは《リベーザ》のモーションを起こすと、ようやく頭が自由になったオオカミを深々と切り裂いた。同時にオオカミが断末魔を残し、青い欠片となって四散した。


「ああ、剣士様。ありがとうございます。……これでこの村は救われます」

 《シャドーハントウルフ》との戦いに勝利し、アルゴと別れた二人は、宿を確保するべく《イニジア》の村に戻ってきていた。村長の涙ながらの感謝を面倒に感じながら聞き終え、報酬を受け取って家を出る。ちなみに、事のついでで村長に宿の場所を訊いたところ、なんと代金を割り引くように手配してくれるとのことで、このクエスト、二人が思っていたよりもお得なものだった。

「えーと……、あ、あった、ここだ」

 宿の場所が書かれた冊子を険しい顔で眺めていたトウマが顔を上げ、他の家よりも僅かだけ立派な目の前の建物に視線を投げる。ドアの上の“INN”と書かれた看板がその建物が宿であることを示していた。

 二人が中に入ると、物腰の柔らかな青年が恭しく頭を下げて出迎えた。

「いらっしゃいませ。村長から話は伺っております。……これがお部屋の鍵になります」

 二人は青年から鍵を受け取る。すると、いかにも古い民宿の鍵、といった風だったオブジェクトが、淡い光を放って消えた。無論、破壊されたわけではなく、鍵の機能が二人のIDに追加されたに過ぎない。つまり、この鍵を受け取った時点でその人物のプレイヤーIDが鍵となるため、宿を借りている期間中はその部屋の扉を開ける事ができるのは本人だけとなるのだ。――もちろん、施錠していなければ話は別だが。

 二人は青年が「ごゆっくり」ともう一度頭を深々と下げるのを尻目にそれぞれの部屋へと向かう。そして、マサキがドアノブを回そうとしたところで、トウマが唐突に言った。

「なぁ、マサキ。少し話さないか?  ……その、これからのこととか、さ」

 マサキは迷った。別に自分がトウマに付き合う理由もないし、マサキから話すことも、特に無い。が、マサキはここで付き合えば、トウマの見せた不可解な行動の理由を推測する材料になるかもしれないと考え、ドアノブから手を離すと、了承の意を伝えた。トウマがドアを開けて入った後に、マサキも続く。部屋の中には粗末なベッドと木製の古ぼけた机、それに付随した丸椅子があるのみで、造りはお世辞にも綺麗とは言えないが、この村にそこまでを求めるのも酷というものだろう。トウマは金属のフレームが露になったベッドに、マサキは丸椅子に腰掛けた。途端に、圧力に対してベッドと椅子がギシギシと抗議の声を上げる。数秒間ほどの沈黙の後、トウマが口を開いた。

「それで、これからなんだけど……、マ
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